#検察庁法改正案に抗議します タグについての私の判断

 検察庁法の改正案が出て私も含め多くの方が批判をした昨年の5月頃から書きかけていた文章があったが、色々調べて書いているうちに取り下げられたためそのままになっていた。読み返すと自分自身の理解のためのメモ、という内容だが、公開しておく。

 


 

 2020年に検察庁法の改正案が審議されていて、それについて批判する立場の人と肯定的にみる立場の人がそれぞれいて、批判する立場の人達が #検察庁法改正案に抗議します というタグを付けて twitter にポストする、ということが5月10日に集中して起きた。私もこのタグを使ったポストをしたひとりである。 

 

 

 このタグを付けてポストすることや、検察庁法改正案に重大な問題があるという論説に対して、検事長の定年を延長すること自体には意義があるとして改正に肯定的な意見を述べる方もおられ、その中には法律を生業とされている専門家も含まれている。改正法案に肯定的意見を持たれている背景には、反対者は検察庁法改正案の内容をよく理解せず、あるいは誤解して反対を表明している、という認識があるように私にはみえた。

 

 法改正に肯定的な意見も読んだうえで、自分はやはり今回の検察庁法改正案には反対であり抗議の意思を示します、ということを、理由を付して書いておくことにした。書いているうちに政府与党は法案取り下げられ、さらに少し時間が経ってしまっているが構わずに書いている。時間が経ったのは合間をみて法案を読んでいくのに時間がかかったから。

 

 要は上記ポストの書き直しだが文字数に制限があるのでもう少し文字数を使って書きたい。他にもっと優れた解説も書かれており無駄なことなのかもしれないが、意見の表明が多く出ることに意味はあると考えている。

 

任期の恣意的に延長できることが例外的な記述で定義されていること

 内閣官房のウェブサイトに「第201回通常国会の国会提出法案」が掲示されていて、その中の新旧対照条文を参照した。PDF形式で以下のリンク先を参照した。

国家公務員法等の一部を改正する法律案 新旧対照条文

 以下が問題の条文の対照表で、上の段が改正案、下の段が現法案となっている。上の段にひたすら続く長い追加条文が今回問題になったものの中心だということで良いかと思う。

検察庁法改正案 2020年 新旧対照表 1



検察庁法改正案 2020年 新旧対照表

 

検察庁法改正案 2020年 新旧対照表 3

 

検察庁法改正案 2020年 新旧対照表 4

 

検察庁法改正案 2020年 新旧対照表 5

 

 法律の条文というものは正確を期す為に必ずしも読み易いものではないがそれにしても悪文だというのが最初に思ったことだった。何故こんな悪文になるのだろうか。それは「検事長の定年を一律引き上げよう」という総論の観点から法改正しようとしておらず、現行法の例外として改正しようという意図から書いているからだろうというのが私の読解結果だった。つまり第二十二条の従来の条文部分だけの改正だけで良いはずが②以降の長い追加条文があって、②と③で上位法である国家公務員法検察庁法に適用する場合の説明を書いたうえで

 

内閣は、前項の規定にかかわらず年齢が六十三年に達した次長検事又は検事長について、当該次長検事又は検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事又は検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生じると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事又は検事長が年齢六十三年に達した日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事又は検事長に、当該次長検事又は検事長が年齢六十三年に達した日において占めていた官および職を占めたまま勤務させることができる。

検察庁法改正案 第二十二条 ⑤   下線は筆者が引いた

 

 として「内閣が」任期の延長を判断できるとしている。更に次の二十二条 ⑥ で

 

内閣は、前項の期限又はこの項の規定により延長した期限が到来する場合において、前項の事由が引き続きあると認める時は、内閣の定めるところにより、これらの期限の翌日から起算して一年を超えない範囲内(その範囲内に定年に達する日がある次長検事又は検事長にあっては、延長した期限の翌日から当該定年に達する日までの範囲内)で期限を延長することができる。

検察庁法改正案 第二十二条 ⑥   下線については上記と同様

 

 定年前の再延長も「内閣が」判断できるとしている。

 

 高度な独立性を持つ機関であるはずの検察庁の長の任免について恣意的判断の余地を残した、例外判断を説明する条文を追加しようとするということのために迂遠な改正案を書いている、本当に総論的な任期延長を定めるならばもっとシンプルな法文になるはずだ、というのが改正案を読んで得られた感想だった。

 

 ちなみに高度な独立性とは何かと言うと、検察官は刑事訴追をすることが職務として定められていて、その対象は「いかなる犯罪についても操作することができ」ることで、即ち行政府で役職にある政治家も対象となる。この権限でもって独立性を持つことで三権分立を正しく機能させる仕組みの一端を担っている。以下はそのことを定義している検察庁法の第四条と第六条、これも下線は筆者が強調のため引いた。

 

第四条 検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。

 

第六条 検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。

 

「無理をして例外的な条文を書いている」ことを私が忌避する理由についても書いておく。前述のポストに書いた通り大阪市立大学における恩師のひとり、田島裕教授との会話から来ている。

 

 筑波大学大学院大に研究の場を移された田島先生に、出張の時などにお時間をいただきお会いしたことが何度かあった。まだ大阪に住んでいた15年以上前のことである*1。あるとき、在日韓国・朝鮮人の方の権利、具体的には選挙権などのことについてどう判断すべきか伺ったことがある。韓国籍北朝鮮籍の知人など権利の取得を求める話に接するにあたって迷いがあった時期だったと思う。それに対して田島先生の答えは明確で「例外を設けるべきではないよ」の言葉だった。つまりある権利を認めるならば韓国籍に限って認めるというような例外条項を設けて良いことはなく、全ての国籍の人に認めるか、日本国籍に限るか、どちらかと考えるのが正しい、ということを示していただいた。これはとても汎用的な判断基準であって、今システムについての仕事をするにしても何かを判断する時は頭の中にある。いわんや今回のような法律に関することならば尚更判断基準として使わなければならないというのが私の考えである。

 


 

 実のところ罵詈雑言、強い言葉を書いてしまいたい気持ちを抑えてこれを書いていた。改正案の文章が酷いと思っていたからだ。文章を書いている身としても我慢がならない悪文だし、百歩譲って仕事上の文章だから正確を期する必要があるとしてももし仕事でこのような文章を持ってこられたら30分ほどこんこんと起票者に対して説教してしまいそうだ。それは問い詰めていったら他意があって本来目的とすべきところではないところで誤魔化したい何かがあるというのが経験的に導かれる推測で、割りと高い確率でその推測は正しい。そして今回の法案の場合誤魔化したい何かとは、まだ起訴されていない政府与党が関わる犯罪行為の幾つかだというのが自然な考え方だろう。

 

 上記には、黒川弘務氏の東京高検検事長の任期について、過去に行われた延長まで遡及的に正当化を試みているのではないかと思ったことについても書こうとしていたが、これは私の条文の読み違えだったという判断が出来たのでカットした。

 

 

*1:愚かなことにご連絡先を紛失してしまい、東京に来てからは一度も田島先生にお会いできていない

2020年の東京都知事選挙

 Twitter などに書いている都知事選で論点とされるべき内容をここにまとめる。開票まで逐次更新する。

 

 なおその主張を聞いて論じるに値するのは山本太郎小池百合子宇都宮健児各氏の三名であろうと思っている。論点によっては名前が出る方はおられるかと思う。後述するがマスコミも候補者を5名のみとりあげて不公平だ、として選挙活動をやめた方もおられる。

 

経済政策/財源

 山本太郎氏と宇都宮健児氏の間でコロナウィルス感染予防対策としての都民への財政的支援の財源について議論となっているのは良いことだと思う。論点が深まるのは選挙をした甲斐がある。

山本太郎氏は「新型コロナウイルス地方創生臨時交付金」と「地方債」を財源としてあげている。

taro-yamamoto.tokyo

 ・宇都宮健児氏は上記政策への対案として「公共事業の見直し」、「条例による基金の目的変更」、「国の財政支援(つまり「新型コロナウイルス地方創生臨時交付金」)、「建設債の借入と予算の組み替え」をあげている。そして西村康稔経済再生相が、今回のコロナウィルス禍は災害とはみなせないとの判断を公にしており地方債を財源とすることに国からストップがかかる可能性があることを示している*1

utsunomiyakenji.com

・小野泰輔氏も地方債の財源としての使用に疑問を呈されている。宇都宮氏と違うのは「熊本県副知事を担当した経験から」という、わかりやすくはあるが曖昧な理由で疑問を呈していることと、財政対策を読んでも「知事報酬、手当て、退職金のカット」と規模の小さい提案しか見つけられないところ。

小池百合子氏は「生活資金・住まい確保等のセーフティネット機能の強化」など抽象的な文言が政策に挙げられていて、要は都民への支援は限定して行う方針のままで行くものと解釈している。

 

経済政策/雇用政策

山本太郎氏が「都職員3,000人増員」というわかりやすい政策を掲げている。

 あと「コロナ失業者への就職支援」「中小企業・個人事業主の前年度事業収入と今年度事業収入のマイナス分を補償」。

 病院への支援を明記しているのが特記事項だろうか。

「病院を潰さないため、減収に対し、災害時と同様に前年度診療報酬支払額を補償」というもので、宇都宮氏が「病院や保健所、医療従事者に対する財政支援の強化」、小池氏が「病院・医療従事者へのサポート強化」という程度の曖昧な書き方をしているのと異なる。

宇都宮健児氏は「公契約条例の制定」「非正規労働者減、正規労働者増」という、立法面からの具体的な政策。公契約条例というのは、国や地方公共団体の業務を業者に委託する際に現場従事者の方の労働条件、具体的には最低賃金などを定めるもの。東京では世田谷区、千代田区、新宿区など一部の区では定めているが、都でも定めるべき、ということ。緊急対策はするが、それはそれとして普通に仕事をすれば生活できるようにするのが良い、という考え方かと思われる。

小池百合子氏の政策では「失業・求職者の就労支援」「氷河期世代、現在の新卒・在学生世代の都庁採用強化など集中的支援」「都庁業務への学生アルバイトの積極活用」「フリーランス事業者の都庁発注業務への参画支援」などがあり、どうも現状ある格差の是正についてはあまり目が行っていないような印象を受ける。起こっている事象に比べて対策が小粒と感じる。

 

 新型コロナウィルス感染対策/都立病院の独立行政法人

小池百合子氏の政策には「都立・公社病院改革を活かした感染症医療体制の充実」と書かれていて、これはつまり今年3月に発表した独立行政法人化をこのまま推し進める、という意図ととれる。

 独立行政法人、というのはつまり各病院が独立採算制となることで効率化を求められるので冗長性が取りづらくなる。今回の COVID-19 感染拡大で、有事には医療体制や施設の冗長性が重要になるのが分かったところなのに、昨年9月に厚生労働省が病院施設の再編を言い出したのを受け12月に東京都が着手、そして今年3月に「新たな病院運営改革ビジョン」が出された。この中に「独立行政法人化による効率化」も含まれている。私はこの経緯から「問題があるのに気が付いたが決めたことなのでこのまま進めます」という態度を小池百合子氏はとっていると判断している。

www.byouin.metro.tokyo.lg.jp

 

山本太郎宇都宮健児氏は独立行政法人化の中止を掲げている。

 そして立候補者のうち上記3名以外にこの都立・公社病院の効率化について政策で触れているのは見つけられていない。

 このことは重要で、ならば山本太郎氏と宇都宮健児氏は「独立行政法人化は停止する」に加えてどこで冗長性を認めてどこで効率化を行うのかまで今の時点で論じて良いのではないだろうか。

  

 

 

  まだ書き始めであり、各マニフェストと6月27日のウェブ会議形式での討論会など眺めながら書き加えていく予定。


6月27日 わたしの一票、誰に入れる?都知事選候補に聞く10の質問 #都知事選候補討論会

 

その他

幸福実現党は七海ひろこ氏が6月25日に選挙活動を行わないことを公表した旨を広報している。「マスコミが一部の候補者だけを取り上げることで東京行動を誘導しているマスコミ型民主主義を改善するため」との内容。では幸福実現党支持者の票はどこに投じられるのか、ということは考える。

・不当競争防止法違反で在宅起訴されている人物、人種主義に基づく差別発言をする人物はどの方であれ候補者として精査するにも値しないと考えている。

・関口安弘氏、2014年までの立候補者姫治けんじ氏と同一人物と思われる方がやはり立候補されているなと視界の片隅で

 

 そういうことに気がつくのも、私が東京に住むようになってから六回目の選挙だから。ちょっと多いように思う。

 

過去の選挙の時に書いたもの




2007年

 

 

*1:現政府与党が国民の支援に消極的であることはよく覚えておくと良い。そして小池氏が政府与党と同じ方針を取るであろうことも。

僕の中の棘

 普段穏やかそうに振舞ってる僕だけど実は心の中に棘を隠し持っているんだぜ、とかそういう感じの話ではなく本当に体内に棘的なものが見つかりましたというお話。

 

 話はいきなり1987年から1988年辺り、私が大阪市立大学に1〜2回生として在学していた頃に遡る。合気道部に所属していた私は稽古中に右親指付け根を痛めたことがあった。ただ歩けないほどではなく、当時まだ十代であったこともあり放っておいたら痛みは和らいで忘れてしまっていた。ただ、この痛みは時々起きるので良くは分からないが実は骨がどうかなっているとかあるかもしれないな、とは思っていた。

 

 子供が出来てからは道場に行くこともほぼなくなり、大田区合気道会で稽古を再開したのは長男が小学校にあがってそれまでに比べれば手がかからなくなってから、私は四十代になるところだった。すると時々、また右親指付け根を痛める。ある時にかかりつけの整骨院で相談したことがあったが、その時には「腫れてますよ。痛みが出た時には冷やすようにして下さい」とアドバイスいただいた。

 

 いよいよ痛みが取れなくなったのは五十を過ぎてからで、冷やしていっとき治ってもすぐに痛みが出る。時には普通に歩いている時でも痛みで立ち止まるようなことも起きるようになってきた。もう歳だし痛めたところは治りようもなくなってしまっているのかもしないと思っていたが、整形外科で診てもらうことにしたのが先々月の2月。思えばこの時にはまだ COVID-19 の感染についてはそんなに気にしていなかった。

 

 それはさておき、医師に「腫れてるね」と柔道整復師さんと同じことを言われたうえでレントゲンを撮ってみていただいた結果、説明された内容は思っていたのと違う内容だった。

 

『右親指の付け根の上に軟骨が飛び出てしまっている。飛び出た軟骨は棘のようなもので、普段は何もしないが指を上に反らせると「棘」が前の関節にぶつかってしまい痛めてしまうようになっている』……とのこと。この「棘」をそのまま「骨棘こつきょく」と言い、この症状を「強剛母趾きょうごうぼし」と呼ぶ。外反母趾はよく聞く病名だが、それと並んで足に起きる病態であるらしい。

 

 それを言われてはたと思い当たったのが、ずっと不思議に思っていた右足にある謎の出っ張り。

 

強剛母趾の足

 

 親指の付け根といってもちょっと甲側に寄った、痛みが出るところから離れた箇所だが飛び出ていて、触ってもそこ自体には別に痛みも何もない。そして皮膚の下にはすぐ骨があるように感じられるのをずっと不思議に思っていた。なんで片側だけここに骨があるのか。骨が折れたり割れたりしたら痛みがあるはずだが何故ないのか。これは軟骨だったわけだ。合気道の稽古の中で打ったりした結果として軟骨が出てしまったのか、人によっては普通に生活していてもこのように出てしまう場合があるのかはよく分からないので次に通院する時には聞いてみようと思う。いずれにせよ、こうなってしまうと飛び出た軟骨は固まってしまうのだそうだ。

 

 症状がひどくなると親指の関節をボルトで固めてしまい、親指が反って痛みが出ること自体を防止するような手術すら選択肢にあがってくるらしいのだが私の場合30年放置してきた割りに症状はまだ一番軽い段階であるとの診断だった。まずは靴底の薄い、柔軟性の高いような靴は履かず、ソールのしっかりした靴を履くこと。あとは鎮痛の塗り薬とロキソニンテープを処方していただいた。そういえば歩いているだけで痛みが出た時にはぺらぺらのスニーカーを履いていた時だった。靴に気をつけて、指を反らさないように歩こうと思う。

 

旧新井宿専売所

 池上通りを大田文化の森前で臼田坂の方に曲がって割とすぐ、東京都民銀行の向かいに「新井宿専売所」という文字を壁に掲げた古げな建物があった。2005年に東京にやってきた時点からこの建物はあり、実質店舗としては営業していない様子であることはその時点から東京都民銀行きらぼし銀行と名前を変えた今に至るまで変わっていなかった。(新聞の販売店だった場所か)と最初に見たときに思った記憶があるが、専売店などという古びた呼称をどこで聞いて覚えていたのか自分でもよく分からない。

 

 この新井宿専売所に解体工事の案内文書が貼り出されているのに気が付いたのは2月の初めだった。

 

旧新井宿専売所

 

 数日後には予定通りに解体工事が始まった。自分が撮った写真のストックを確認したがこの建物を撮った写真は出てこなかったので、ぎりぎりで解体直前の姿を撮れたことになる。運が良かったのかもしれない。

 

 ところで「新井宿専売所」で検索するとネット上には少し離れた住所を示す情報が見つかることに気がついた。池上通りを渡って、一本脇道に入ったところにある日本経済新聞の販売所で、看板には「ニュースサービス日経大田中央」とある。今の日経新聞売店は「ニュースサービス日経」、略称「NSN」で揃えられているらしい。さらに、日本経済新聞のサイトで専売店の情報を確認すると大田中央店は載っていない。看板はそのままなので前を通っても気がつかなかったがもう廃業してしまわれたらしい、と気がついた。おそらく旧新井宿専売所も同じオーナーさんの資産だったのかもしれず、現店舗を畳まれると同時に旧店舗も手放した……ということなのかもしれない。

 

 壊された旧新井宿専売所の土地は更地となっている。こんなに奥行きのない、箱のような建物だったのだなと思いながら前を通っている。

 

旧新井宿専売所、臼田坂下



馬込の失われた建物たちシリーズ

 

 

 

 

mukunokiyasuo.hatenablog.com

 

 馬込の失われた建物たち地図

ストロング系酎ハイの成分への疑義

 勤務先で年一回の人間ドックを受けられているのだが、昨夏の検査で肝臓の値が基準値を超えたということがあった。γ-GTP については十年以上高めの状況が続いているのだが、この度は GPT(ALT) の値も突然基準値を超えた。GOT(AST) も基準値内だが上がっている。いずれも肝臓に関する検査値ということになる。

 

 γ-GTP は肝臓をはじめとする臓器の細胞内に存在する酵素で、これが血液に出ているということは何らかの問題が臓器で起きているのではないかということになる。

 

γ-GTPは本来ならば細胞内に存在しているのだが、何らかの理由で細胞が破壊されたりしたことによって、血中へと遊離したことによって、この値は上昇する。また、ヒトなどでは特に疾患が無くともγ-GTPは血中から検出されるものの、疾患があると、その値は異常に上昇する場合がある。特に、胆道系疾患の胆嚢炎や胆道炎、さらに胆道閉塞などによって上昇する。また、肝臓疾患の肝ガンやアルコール性肝障害などによっても値が上昇する。このため、肝・胆道系疾患のスクリーニングのための検査項目の1つとして利用され得る。

γ-グルタミルトランスフェラーゼ - Wikipedia

 

 この値が高いため、人間ドックでの問診では毎度酒量を確認される。そのため酒を飲む日を減らしてきていて、四十歳を過ぎてからは週四日までとしてかつ二日続けて飲まない日を作るようにしていた。五十歳を迎えて以降は更に減らして週二、三日としている。それにも関わらず上昇、かつ ALT も異常値を示したので何が悪いのかにわかには分からなかった。γ-GTP が胆道についての異常を指し示すことが多いのに対し ALT(アラニンアミノ基転移酵素) の検査値の上昇は肝臓そのものに限定した病変の可能性を示すらしい。細胞内にあるはずの酵素が血液に多く漏出しているのは何か問題があるのでは無いか、という見方は γ-GTP と同じらしい。

 

逸脱酵素としての性質から、血清中のALT濃度は肝障害の程度の指標として利用される。肝細胞が破壊し尽くされるとむしろ流出量は低下する。肝臓の逸脱酵素としてALTとともに知られるAST(GOT)よりも特異性が高い(肝臓以外の障害では上がりにくい)が、ASTとの比率も臨床的に意義がある。

アラニンアミノ基転移酵素 - Wikipedia

 

 昨年の人間ドックの診断結果には半年程度で再検査を、という経過観察扱いとする旨が記載された。勤務先が費用負担して血液検査が出来ると分かったので先日2月初旬に検査を受けて来たのだが、漫然と再検査はしないとのお達しだったのであるものをやめて検査に臨むことにした。即ち

 

ストロングゼロ」と「99.99」を飲むのをやめる

 

 ことにした。いわゆるストロング系酎ハイ。そして検査結果が以下となる。

 

項目名

基準値

2016年7月

2017年7月

2018年8月

2019年7月

2020年2月

GOT(AST)

39以下

16

16

16

27

16

GPT(ALT)

39以下

22

19

20

45

24

γ-GTP

69以下

115

83

116

209

126

 

 今月の検査で ALT は基準値の範囲内に戻った。AST も下がった。γ-GTP は基準値を超えているがやはり下がっている。

 

 Twitter の自分のポスト履歴を見返してみると2017年中は「飲んだことがない」と明言している。そして2018年4月には「飲んだ」とポストしており、缶ビールレギュラー缶のあとの二本目に飲むという習慣がこの辺りから1年半ほどは続いたことになる。2018年8月の検査値で γ-GTP の検査値が少し上がっているのは飲み始めて3,4ヶ月で影響が出始めていたのかもしれないと思える。そして2019年11月あたりで飲むのをやめたので3ヶ月で改善結果が現れたものと推測したくなる。

 

 ストロング系酎ハイを原因として仮定した原因はいくつかあるのだが、そのひとつが精神科医の松本俊彦さんの Facebook での下記投稿だった。

 

結局あれは「お酒」というよりも、単に人工甘味料を加えたエチルアルコール=薬物なのです。そして、ジュースのような飲みやすさのせいで、ふだんお酒を飲まない人や、「自分は飲めない」と思い込んでいる人でもグイグイいけます。そうした人たちが、ビールの倍近い濃度のアルコールをビール並みかそれ以上の早いペースで摂取すればどうなるのか。ただでさえ人類最古にして最悪の薬物といわれているアルコールですが、その害を最大限に引き出す危険な摂取法です。

松本 俊彦 - ストロングZEROは「危険ドラッグ」として規制した方がよいのではないか。半ば本気でそう思うことがよくあ... | Facebook より

 

 上記引用の太字は私が附したもの。なるほど、と思うのだが私の身体に起こったことを鑑みると「高い濃度のアルコールを早いペースで摂取する」ことだけが検査数値に現れるような事象を起こしたのかについて少し疑問を持った。日本酒やワインなら、酎ハイとの飲む速さは縮まり、そしてアルコール度数は酎ハイに比べて高い。ストロング系酎ハイを辞めてからの三ヶ月ほど、荏原町の伊豆屋酒店で日本酒を買って飲んでいるので酒量としては著しく落としていないという印象なのだが、この検査結果が出ている。

 

人工甘味料を加えたエチルアルコール=薬物」自体が、醸造の結果得られるエチルアルコールとは異なるような、人体で処理するのに更に負荷がかかる特性を持っているなんていうことはないのだろうか。サントリーやサッポロをはじめとする大手酒造メーカー各位の製品にケチをつけるようで心苦しいのだが、私のような例が他にも無いのかきちんと調べてみてほしいと思うに至った。血液検査で同じようなことがあれば是非参考にしていただき、数値を共有いただければ幸い。

 

 

 

ある日の夢

 車を買う予定があり駐車場を探している。その日はかなり大きな、ショッピングセンターの駐車場みたいなところを見にきている。比較的上の方の階にいて、外が見える。

 

 突然、遠くで白く閃光があった。具体的な衝撃は感じていないが「爆弾が落ちた」と言う事実が頭の中にあって、自分が焼き出されたということを認識した。瓦礫の光景を見た気がする。焼き出されて、どこかに電車で移動することになった。今から考えるとJRのどの在来線でも、乗り馴れた近鉄電車でも、新幹線でもない。子供の頃に帰郷のたびに乗っていた、山口線山陰本線の古い車両みたいだったかもしれないし、もっと古かったかもしれない。ドラマの中で見た、戦後直後のような。

 

 電車はごとんごとん揺れている。ごとんごとん。ごとんごとん。がたがたがたがた! あれ? 電車にしては揺れが強過ぎないか?

 


 

 目が覚めた。大阪市城東区森之宮の、15階建ての公団住宅の11階、北端から二番目の部屋。畳に薄い布団を敷いて寝ていた。最初に目に入ったものが何であるのかを理解するのに15秒ほど要したと思う。それは、本棚が床と梁との間で凄まじい勢いで上下にバウンドしている風景だった。あんな光景はあの時にしか見たことがない。後で思ったことだが、この公団住宅を巨人が両腕で掴んで、もの凄い勢いで上下に揺すぶっているという感じだった。

 

 これは経験したことがない地震だ、と気がついたのがその15秒後だが、全く動くことができなかった。揺れがおさまってからふと横を見ると、車輪のついたテレビ台に乗せていたブラウン管テレビがこちらに少し寄ってきていて少しぞっとした。本棚については特に突っ張り棒などの耐震補強は施していなかったが、梁から数cmしかあいていない高さの本棚を買っていて、もし地震があっても梁に引っかかるのですぐに倒れてくることはないだろうと思っていた。実際に倒れてはこなかったが、もう少し長く揺れたら震動しながら前に移動してきて私の方に倒れてきたのかもしれなかった。

 

 テレビの電源を入れるとちゃんと映った。当時私は淀川を地下鉄御堂筋線で渡って通勤していたが、どうやら橋のどこかに破損の可能性があるとの情報があり、出勤は早々に諦めた。仕事場には電話を入れたが、自部署に出勤出来ていた人はいなかったような記憶がある。マシンインフラ周りの部署には、なんとか出勤している人もいるようだった。

 

 やがて高速道路が横倒しになっている映像がテレビ報道で映され、「長田」「深江」といった地名が出てきたので私はてっきりすぐそばを通っている阪神高速東大阪線が横倒しになったのだと勘違いした。私が生涯で経験したことがないと思った揺れはまだましな方で、淡路島が震源であり倒れたのは阪神高速神戸線であって神戸、特に西の方の被害はあんなものではなかったことが分かったのはあとのことだった。

 

 当日は公団住宅の前までは出たが、それ以上は出かけなかったと記憶している。コンビニエンスストアにも行かずに家にあるもので凌いだ。あとはひたすらラジオとテレビで流れてくる情報をみていた。奈良学園前の実家には連絡がつき、両親も妹も特に被害を受けていなかった。

 

 結局御堂筋線は動き出し、翌日には出勤した。当時のリーダーは「こんな時に仕事してもしゃあない。梅田に出て献血しようか」と言って、皆で献血しに行ったことを覚えている。

 


 

 これが 1995年1月17日、連休明けの火曜日の、私の記憶である。毎年阪神淡路大震災の日が来ると思い出すが、ちゃんと書いたことがないことに気がついて文字にした。

 

大田区でのとんど焼き

 馬込にやってきたのは2005年だが、それまで大阪にいた時には正月のお飾りは千里中央 から中央環状を橋で渡ってちょっとのところにある上新田天神社に持っていっていた。上新田天神社のとんど焼きはとても壮麗な祭事で実際にお焚き上げの時にも楽しみにみに行っていた。

 

 2005年に大田区に移ってきて、翌2006年より東京での正月となった訳だが身近にとんど焼きが見つけられず苦労した。最初の数年は正月は実家のある山口県に帰っていてお飾りをしていなかったり、やむを得ず普通のごみのように廃棄してしまっていたかもしれない。六郷の、多摩川河川敷でやっているのはこの時から知っていたが、今に至るまで一度も行ったことがない。大田区も広くて少し遠いのと、子供が小さい時には思うように家族で動けないということもあった。

 

 2010年の正月明けにお飾りを持ってどこかにお納めしようと私ひとりで出かけたことがあった。最初どこを目指していたのか今となっては思い出せないのだが、東急池上線御嶽駅のそばに鎮座する御嶽神社でお焚き上げをされていることを偶然通りがかって知った。以降何年かは、御嶽神社にお詣りしてお飾りを納めるようになった。お詣りのあとは駅前の商店会を歩いていくのが常で、「リヨン麦の華」というベーカリーに寄ったり、「安信屋」という八百屋を覗いたり、ダイエー(今はイオンスタイル)に入ったり。

 

 御嶽神社がとんど焼きをやっておらず、急遽新丸子の日枝神社にお飾りを納めさせてもらったのが2016年。お焚き上げをされる寺社を探して車ですぐに行ける場所を探したのだった。昨年2019年までの四年間は丸子山王にお納めしていた。昨年は新丸子駅から夜歩いて行って寒かったのを思い出す。

 

 実は徳持でもとんど焼きがあるみたいだというのは以前から気がついていた。過去の Twitter のポストログを見返してみたら2012年に行きそびれた、と言っているので、それきり忘れてしまっていたらしい。

 

 かくして今年、2020年に徳持神社に行ってきた。なおネットで検索してもとんど焼きの日時について正確な情報が分からなかったので正月のうちに一度初詣に自転車で行ってきて確かめてきていた。今年は1月12日の日曜日、11時〜13時、とあった。

 

 1月12日は天気が良かったので自転車で出かけ、11時過ぎに徳持神社に着いた。まだとんど焼きは始まっておらず、拝殿への列に並んでお詣りする。12時からお焚き上げが始まった。

 

https://www.instagram.com/p/B7NJ27cgYqd/

 

 街中でどうやってお焚き上げするんだろうと思っていたのだがそうか、小屋を建ててその中で行うのか。ちなみにお飾りを火に投じているのは徳持神社の氏子の方々らしかったが、消防署からも人が詰めていて万が一のための消化の準備もされていた。

 

徳持神社 お焚き上げの準備

 

 11時過ぎの時点でお詣りの列とは別の列が出来て歩道に伸びていたがこれは境内でお汁粉と焼き芋を作って配られるのに並んでいた。これが12時を過ぎると神社と同じ池上通り沿いの、区画の角にある彩華と言うラーメン屋の前を過ぎて曲がり、毘沙門天様の境内の前までになった。並ぶ時間が長くなりそうだったので、こちらには並ばずに帰った。来年からはこちらにお世話になるかと。

 

徳持神社 お汁粉と焼き芋に並ぶ列