旧新井宿専売所

 池上通りを大田文化の森前で臼田坂の方に曲がって割とすぐ、東京都民銀行の向かいに「新井宿専売所」という文字を壁に掲げた古げな建物があった。2005年に東京にやってきた時点からこの建物はあり、実質店舗としては営業していない様子であることはその時点から東京都民銀行きらぼし銀行と名前を変えた今に至るまで変わっていなかった。(新聞の販売店だった場所か)と最初に見たときに思った記憶があるが、専売店などという古びた呼称をどこで聞いて覚えていたのか自分でもよく分からない。

 

 この新井宿専売所に解体工事の案内文書が貼り出されているのに気が付いたのは2月の初めだった。

 

旧新井宿専売所

 

 数日後には予定通りに解体工事が始まった。自分が撮った写真のストックを確認したがこの建物を撮った写真は出てこなかったので、ぎりぎりで解体直前の姿を撮れたことになる。運が良かったのかもしれない。

 

 ところで「新井宿専売所」で検索するとネット上には少し離れた住所を示す情報が見つかることに気がついた。池上通りを渡って、一本脇道に入ったところにある日本経済新聞の販売所で、看板には「ニュースサービス日経大田中央」とある。今の日経新聞売店は「ニュースサービス日経」、略称「NSN」で揃えられているらしい。さらに、日本経済新聞のサイトで専売店の情報を確認すると大田中央店は載っていない。看板はそのままなので前を通っても気がつかなかったがもう廃業してしまわれたらしい、と気がついた。おそらく旧新井宿専売所も同じオーナーさんの資産だったのかもしれず、現店舗を畳まれると同時に旧店舗も手放した……ということなのかもしれない。

 

 壊された旧新井宿専売所の土地は更地となっている。こんなに奥行きのない、箱のような建物だったのだなと思いながら前を通っている。

 

旧新井宿専売所、臼田坂下



馬込の失われた建物たちシリーズ

 

 

 

 

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