とある書籍取り寄せの風景

 大日本印刷が何社かの書店と組んでサービス提供している honto というサービスがあり、サービス群のひとつに本の取り寄せサービスがあった。アマゾンをあまり積極的には使わない習慣がある私は、この本の取り寄せサービスを honto with というスマートフォンアプリから使えたのでアプリで予約をして近くの提携書店で受け取るというやり方で時々使っていた。川崎駅前のラゾーナ川崎の1階に入っている丸善書店が受け取りの場所だった。残念ながらこのサービスは終わってしまい、書店が提供する別のサービスになってからは使っていなかった。

 

 さて現在執筆している文章のある1行のために上泉秀信さんという戯曲作家について調べたいという状況になった。評伝が一冊出ているのだが小さな出版社さんによるもののようで国立国会図書館では読めそうだが手近の書店にも区の図書館にも見つからない。これは購入しようと久しぶりに取り寄せを試みた。歴史春秋社という発行元出版社にも問合せたが当然のように直送だと送料がかかるので、書店に依頼することとした。

 

 さて、10月のある日ラゾーナ川崎に立ち寄ることがあったので1階を訪れたところ丸善が入っていた場所が一面シャッターが閉まっている。貼り紙をみると丸善は閉店して撤退することが判明した。同じ並びの北海道物産店はリニューアルして再オープンするようだがスターバックスコーヒーも閉店らしい*1。川崎駅アトレには結構広い「有隣堂」が入居しているのでたちまち困るということはないのだが、あれほど来客がある店でも(あるいは大きな店だからこそ?)保たないのだなとしばらく立ち尽くして貼り紙を読んでしまった。

 

 

 最寄り駅である大森駅アトレに入っているブックファーストに立ち寄り、書籍検索端末で該当の書籍、『農民作家上泉秀信の生涯』を検索してプリンターで印刷、レジで取り寄せ依頼をした。当然ながら2~3週間かかる、なんだったら取り寄せが無理だったなんていうこともあり得るという説明は受けたが、出版社とは直接やりとりをしていて依頼があれば出すと仰っていたことはお伝えした。

 

 ちなみに、実は丸善やブックファーストに行く前に、JR大森駅前にある街の本屋さん「町田書店」でも取り寄せの可否を聞きに言っている。書名と出版社をみたご主人は「ちょっとうちでは難しい」と言われたので御礼を言って引き下がった。私が大田区にやってきて20年以上立っているが町田書店はずっとあり、ご主人も同じように店頭に立たれている。私よりは年上のはずで、それなりに高齢になってしまわれたかとおもう。おそらく取り寄せが全然できないわけではないのではないかと推測するのだがご店主としてはウェブシステムだのメールだのでの発注というのはハードルが高く、取次とのきまったやりとり以外は難しいという判断に至ったのかな、と推測した。

(2026/10/31 追記)
Threads で「撤退ではなく一時休店だ」という指摘をいただいて確認したところ、丸善ジュンク堂書店公式ページのリリースではそのようになっていた。お詫びして訂正します。

corp.maruzenjunkudo.co.jp

 

 

*1:ラゾーナの3階にもスタバはありそちらは継続するとのこと

「大田文学」についての端書き

 今年2026年の4月1日に創刊された「大田文学」という地域誌に私の書いたものを使ってもらっている。10月1日には2号が刊行されており順調に巻を重ねることができつつある。

 

www.hanmoto.com

 

 この雑誌が構想されたかなり初期の段階で私は原稿の相談をいただいており、その御蔭で2号にも引き続き書かせていただけているようなことになっているのだが、そういえばその経緯をどこにも書いていなかったなとおもうのでご迷惑がかからない範囲で書き残しておきたい。「大田文学」が永く刊行されたのちに誰かが興味を持って調べられて、この文章に行き着いて役に立つようなことが起きたら良いな。

 

 Twitter 上でわりと以前より相互フォロー関係にあった中野健作さんから原稿についてのメールをいただいたのは 2025年5月10日のことだった。2022年11月に著作サイトを立ち上げ、昨年2025年には個人出版ブランド「路傍の文学」でごく小規模にオンデマンドプリントを使っての出版を始めていて、それを見ていただいていたのかとおもう。

 

 あとで中野さんにお伺いしたところこのご連絡をいただいたのがこの雑誌発刊プロジェクトの構想最初期であったとのことだった。原稿は、既に書籍化している『内川逍遥』の巻一から、内川の河口付近について書いた文章を要望いただいたのですぐにデータでご提示した。また、当初はクラウドファウンディングを使う可能性もあったのでそれについてはお手伝いするように動いた。直接会ってお話ししましょう、ということになり6月19日の木曜日にお話しもしている。場所はジャーマン通りの「あんず文庫」ご店主加賀谷さんが店内の席を使うことを許してくださった。

 

 この時に椋からは、小規模出版として雑誌を運営されている事例などをみて参考にされては、ということはお話しし、例として「オフショア」という雑誌の刊行について発行者である山本佳奈子さんが書かれている記事などをひいてお話しした。また大田区には「月刊おとなりさん」という地域誌があり、部数についてはこれから立ち上げるという視点でみると参考にならないぐらいの巨大な成功例といえるものなのだがこのこともお話ししたりした。あんず文庫の加賀谷さんもフォローを入れてくださった。

 

 この時点で中野さんは梅屋敷にある書店「葉々社」の小谷さんが開催されている「本屋と相談」という、書店開業や出版開業を考えている方々を対象にした相談会に参加予定だというのでそれは是非やった方が良いという話もさせていただいた。

 

www.instagram.com

葉々社さんのアカウントによる直近の「本屋と相談」案内

 

 この時点で構想されていた誌名は「季刊大田」だった。だが「本屋と相談」で小谷さんからテーマを広げ過ぎることにより読者に届きにくくなるリスクやそのリスクと想定発行部数の不釣り合いについてアドバイスがあったようで、テーマを文学に絞る決断を中野さんがされ、「大田文学」となった。

 

 中野さんはこれまでも雑誌のデザインなどの仕事をされていたと伺っていて、実際原稿を出すと何割か増しで読みやすくなった紙面の案を出していただくものでプロの仕事というのはこういうものだな、と思っている。刊行するにあたっては取次としてトランスビューを通して配本できるようにされ、大田区を中心に書店に置かれ買えるようになっている状況となっている。2号は冒頭に書影を掲げたように宇野千代さんをモデルとした主人公を石橋静河さんが演じている NHK 連続テレビ小説「ブラッサム」が始まったことを受けて宇野千代特集となっており売れ行きは良いようにきいている。巡り合わせだがが運の良さも味方につけられているかもしれない。

 

 創刊号にはだいぶ以前に「電子雑誌トルタル」で発表したのが初出で本としても刊行している『内川逍遥 巻一』から「家船の影」という一編をそのまま使っていただいた。2号は『内川逍遥』として書いていて現時点未発表の「子供たちの眼」という一編があるのだが、そこからイタリア文学者河島英昭さんについて書いた文章を取り出している。

 

 

「犬ではないと言われた犬」 向坂くじら (百万年書房)

 昨年の12月に開催されて、ここでも別途記事にした「馬込文士村演劇祭2025ブックフェア」で購入した本のことを書きたいのだが、購入に至る経緯を含めて。

 

 ブックフェアに出る前、家でちらっと Twitter をみていたらこんなポストが目に入った。

 

 

 百万年書房代表の北尾修一さんのポストである。うむ。なるほど申し訳ない。地元民ならば分かることだが大田文化の森付近に店舗というものがあまりない。コンビニエンスストアといえば春日橋の交差点を斜向かいに渡った先にあるセブンイレブン、池上方面に少し歩いてミニストップ。ミニスーパーだと春日橋の交差点角にまいばすけっと。どれもちょっとづつ歩かねばならず、他のまちから来られた出店者の方々に優しくない。この文章の末尾にブックフェスタ開催前に書いた文章を貼っておりそこにも書いたが大田文化の森という開催場所が微妙な点が悪い方に出てしまった事象である。焼きそばは大森駅から大田文化の森に池上通りを向かう途中、大森郵便局の隣にあるオリジン弁当で購入されたのだろう。

 

 スーパーマーケットやコンビニで弁当などテイクアウトで買う際についている割り箸やスプーンは取ってあるし、100円ショップでも割り箸や紙皿は購入してストックしてある。これは COVID-19 やインフルエンザなどに家族が罹患した際に食事を紙皿や割り箸で供して洗い物をしなくて良いようにするための備えである。災害が発生した場合にも使えるだろう。私は割り箸を一膳かばんに入れて大田文化の森に向かった。

 

 

 既にどなたかが箸を持っていかれたかもしれないと思っていたがどうやら間に合ったらしい。良かった。

 

 百万年書房さんのブースをみると向坂くじらさんの著書が一番目立つところに陳列されてある。北尾さんが「向坂くじらさん、すごいですよね」 と声をかけてくださる。

 

 申し訳ない、実のところこの時点で私は向坂くじらさんについてお名前ぐらいしか知らずにいた。二年連続で芥川賞候補に挙がっていたのに。

 

 いや、多分そういうことではない。私は向坂さんの随筆集のなかから『犬ではないと言われた犬』を選んで出版社代表の手から購入して、恐らくは会場にいる時点から読み始めていたのだが(これはなんで読んでなかったんだろうね……)とすぐに感じていた。いや、普段から文学賞受賞作にしろ村上春樹の新作にしろなかなか手に取らず自分に興味があるような本をやすみやすみ読んでいる程度の人間なんだから仕方ないのだけれど。

 

 どの章も書き出しがすっと身近なところに入ってくる。例えば表題作「犬ではないと言われた犬」の書き出しは回転寿司が好き、という一文から始まる。それが『美味しんぼ』の山岡士郎の話になる。『美味しんぼ』を読んだ人なら「1週間後に~」のあのフレーズを想起するだろうし、あるいは読んだことはない人であってもネットミーム的にどこかで使われているのに接したことがあって察することができるかもしれない。それが詩人である向坂さんにとって大事な話になっていく。

 

 単に文章がうまいだけではない。引用される詩や文章からは多くの作品を向坂さんが摂取されていて、その中から琴線に触れるものがとってあるのであろうことがうかがえる。北尾さんの「向坂くじらさん、すごいですよね」はそういう作品への好評価を受け取ってきたことも含めての言葉であったかとおもう。

 

 

 

 

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ストロング系酎ハイの成分への疑義への回答に出会った話

  7年ほど前に人間ドックの結果で肝臓に関する検査値が悪くなり、ストロング系酎ハイをやめたらある程度戻ったということを書いたことがあった。なんで他のお酒では起きずに酎ハイで起きるのだろうか、なにが入っているとこうなるのだろうか、というようなことを書いていた。

 

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 これについてほぼ答えとなるような動画を Pivot でみてなるほどね、となったことがあったので事後談として書いておきたい。まとめると、

  • アルコール自体に 1g  : 7.1 kcal(キロカロリー)ある
  • 例えばアルコール度数 9.0 % のストロング系酎ハイは飲みやすさの割にレギュラー缶1本で 200 kcal に相当する
  • 平均値で1日に摂取して比較的害の少ないアルコール量の目安は男性で 50 g、女性で 40 g
  • 肝臓はタフな臓器なので一定時間で復活する。48時間、少なくとも1日あけて飲むことを推奨している
  • 酒は害があることは分かっているが厳しくするとアルコール依存症治療などでは患者は来なくなっちゃうので飲みながら減らしていく妥協案を示していく

 


www.youtube.com


 2020年の文章を書いた頃には週末などは続けて飲酒する日もあったので、その状態でビールレギュラー缶2本のあとにアルコール度数の高い酎ハイを飲む、というような行動が肝臓に関する検査数値に影響を与えていたというのが答えだったのだな、と理解できた。

 

 PIVOT ではこのテーマの動画が他にもあって、「果物を食べるのと、果汁100%ジュースを飲むのと、量が同じであっても肝臓へのダメージは違う」ということを説明しているものもあった。ジュースの方が、身体に入ってくる速度が圧倒的に早いため肝臓への負担が大きくなる、という話しでこれは比較的飲みやすく作ってある酎ハイであっても同じことが言えるのかもしれない。

 

 これを受けて昨年から、飲む日をできれば週2日とし1日以上空けるようにして、数値がどうなっているのかを見るようにしている。あと、これは NHK の「あしたが変わるトリセツショー」という番組で「お酒とのつきあい方」というテーマでやっているのをたまたまみて、紹介されていた「最初の1杯/本を30分かけて飲む」という飲み方を実践するようになった。これも満足感があるまま酒量を抑えることができている。

www.web.nhk

 

 今年の人間ドックの検査結果では残念ながら γ-GTP の値はまだ正常値にはなっていなかったが少し落ちていた。なお数年ぶりに GPT(ALT) の値が要注意となっていて、この値は非アルコール性脂肪肝でも悪化するので恐らくはそちらだな、と思っている。食事と運動に関して少し見直して体重を落とそうとしていて、その結果が来年の検査値にどう出るかを注視する予定である。

 

 


 

 

『世界はフムフムで満ちている』 金井真紀

 昨年2025年9月の梅屋敷ブックフェスタで、牟田都子さんのブースの次に立ち寄ったのが金井真紀さんのブースだった。こちらも金井さん御本人がいらっしゃる。最初に手に取ったのは『聞き書き 世界のサッカー民』だった。私はセレッソ大阪のわりと息の長いサポーターなので。

 

 次に『世界はフムフムで満ちている』を手に取ると、すぐに石工の方にインタビューした章が目に止まってこちらを買った。こちらは、『関東子連れ狛犬の系譜』をかいているのだが石工の方について少しでも情報っぽいものがあればアクセスしようとおもうから。

 

 様々な職業の方の印象的な言葉をちりばめて書かれたインタビュー集。ひとつひとつはすぐ読めてしまう、四百字詰め原稿用紙で1枚半ぐらいの長さ。インタビューした相手の職業だけが書かれていて個人名などはないから、その時話を聴いて感じ取ったエッセンスをまとめたものだ。石工さんの章では

 

建設現場では、石工がいちばん下に見られてな。

 

 という一行が印象的で、この行ために買って読んだんだなとあとで思った。この本の副題は「達人観察図鑑」で、この石工さんも上記の一行の状況から自分のちからで何を目指すべきかをつかんで金井さんからインタビューを受けるに至っている。

 

  普段、どこのなんという石工さんの話、というような個人的な情報を、具体的な典拠であれ口碑であれ集めようとおもうのだけれど『世界はフムフムで満ちている』ではそれは前述のように全く書かれない。では私にとって無用な本なのかというとそんなことは勿論なくて、おそらくはきちんと時間をとられたインタビューからいいところを抽出する力もみごとだし、石工さんを取り巻く価値観に引用されたようなものがあって、だからこそ一部の石工の方は自分を「彫工」なんて呼び方で銘に刻んだりしたのかもしれないという可能性に気づくことができたので。

 



馬込橋食糧

 大田区中央(新井宿)から南馬込に向かって東急バスが臼田坂を登り切った先、馬籠八幡様と長勝寺を過ぎたところに馬込橋食糧という米穀店があった。第二京浜国道を横切る手前である。

 

 2010 年の Twitter のポストで、通勤経路がJR大森駅経由から東急荏原町駅経由に変わった時に日常的に前を通るようになった時に馬込橋食糧についてポストしている。

 

 

 やはり気になるお店の外観だったのだろうなとおもう。なので写真を撮っているはずだと思うのだが今のところ見つかっていない。あれほど前を通っていながらなんということだろうか。まぁ馬込橋食糧でお米を買ったこともないので致し方ないところなのかもしれないが。以下、Google Street View からとらせていただいた在りし日のお店の姿である。2023年というとパンデミックが収まってきた頃かと思うがすでに営業はされていなかったようにおもう。上記ポストの頃は店は開けておられたと記憶している。

 

 

 現在はリモートワークが基本となり、出勤する時もJR大森駅経由にまた変わっているのだが荏原町商店街に出ることは時々あり、2月のまだ寒かった頃通って更地にされつつあることに気がついた。以下は数日後、2026年2月23日に改めて様子を撮りに行ったときのもので完全に更地になってしまっていた。これを書いている7月時点も更地の状態である。お店含め広い敷地だったんだな。

 

 思い返すと大田区にやってきた2005年時点はお米やさんも今よりもあった。屋号を覚えていないが環七通りと大森駅を結ぶジャーマン通りの、数ヶ月前までパーチコーヒーさんがあったところの向かいのコインランドリーがあるところを入ったところの米屋さんでは玄米を購入したことがあった。コインランドリーがあった場所は当時赤い看板のリストランテで米屋さんがあったところは今は戸建てになってしまっているから20年も経てばまちの風景は変わってしまっている。

 

 第二京浜道路と馬込橋(写真前の道を右上に行ってすぐ)を越えたところ、東急バスの大森駅方面行きの馬込橋バス停前には北村米穀というお米屋さんがあったがこちらは2005年時点既に営業していなかったような気がする。品川区に入ってすぐの荏原町商店街は池上精米店とおはぎなどが人気の沖田精米が健在だが、かつては商店街をなしていたが現在は住宅地になってしまいかつ近隣の小売チェーンストア(ライフ、メガドン・キホーテ、西友トライアル、イトーヨーカ堂)に買い物に行く人が多くなってしまったであろう大森山王や馬込では個人商店の米穀店という商売は難しいのかもしれない。

 

 個人客としては店に入って値段みて買うか買わないか判断するのが難しいような仕組みになってしまっていると立ち寄り辛いし、飲食店からの注文があまりないとなると業務米穀店としても店の存続は難しい気がする。駅に近ければ池上の蓮月のように別業態で営業して建物を残すというようなこともあるかもしれないけれど、そういえば今日の蓮月さんの instagram でのポストで「2019年のカフェ紹介本に掲載されたうち12軒の古民家カフェは12軒閉店している」ということを書かれているのをちょうど読んだところだった。経営の才覚というものは求められてしかるべきだが、誠実に商売をされているならば店を続けていけるようであってほしい、結果的にそれでまちの風景やひとの気質というものが生き続けるならばより良いのではないか、という気持ちは持っている。


馬込の失われた建物たちシリーズ

 

 

 

 

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『文に当たる』牟田都子

 昨年2025年9月の「梅屋敷ブックフェスタ」の2週目にうかがった時、入り口で入場料500円を支払ってすぐが牟田むた都子さとこさんのブースだった。牟田さんは Twitter でポストされているのを一方的に見させていただいていたのでその方が突然現れたように感じてしまいちょっとびっくりしてしまった。いや、ブックフェスタのポスターには出店者のお名前は載っていたのでそんなのわかっていただろうと言われるべきところなのだが。

 

 一昨年から個人の出版ブランド「路傍の文学」を始めていて校正と校閲は自己で行っている。誤字脱字や用語の揺れについては ローカルPCに大規模言語モデル環境(いわゆる LLM)を構築して運用を検討しているというような状況。いずれにせよセルフ運用である状況は当面続くであるとおもう。そういう状況で、プロの校正家に仕事を依頼するというのは、それぐらいの費用を拠出できるようになるのは今はまだ難しいけれどいずれ……という、まだ遠いところにある目標であったりする。なので突然牟田さんから直接御著書を購入できるという状況は私にとっては挙動不審にならざるを得ない状況だった。選んで購入したのは『文にあたる』。校正や校閲そのものについて、あるいは校正に関係ある事柄について言及のある文を引用しつつ牟田さんの考えを綴られてある。

 

 今年2026年4月に創刊された雑誌『大田文学』に寄稿した拙文は既刊の『内川逍遥』で発表済みの作品だったが紙面を作る作業の中でのチェックで「なんでその記述揺れを見逃していたのか……」という箇所があった。なので校正者、校閲者が常に対峙するプレッシャーのごく一部に私も直面したことがあって、その直面の瞬間に私は『文にあたる』で読んだことを思い出していた。

 

 購入の際にひとことふたことお話しすることができたのだけれど、もうちょっと話が弾むように準備しておければよかったのかなとおもう。