2019年大田区の区長選挙

 2019年の大田区長選挙候補者の情報をまとめておく。選挙期間中に更新できるところはしていく。

 

 3名の方が立候補されている。

 現区議の岡高志さん、大田区在住で東京大学名誉教授の神田順さん、現区長の松原忠義さん。

 

2019年大田区長立候補者

 

 最初に書いておこうと思うのが松原さんが今回当選すれば四選目となる立候補であるということ。彼は2007年に東京都議を辞職して大田区長選に立候補、当選しているがその際の公約に「区長の多選防止」を掲げており、実際多選自粛条例を制定している。それを昨年12月に廃止する条例を出して通しており、そのうえでの立候補となっている。

 

 多選自粛につきましては、マニフェストの中で区民の皆様へお約束したことであり、緊急計画のこの領域に位置づけております。
 本定例会に、「大田区長の在任期間に関する条例案」をご提案させていだたきたいと存じます。
 区長という大きな権限を有する職に、1人の者が長い期間在職することで、起こりうる弊害を未然に防ぎ、区政の活力を維持するために、区長の任期は、「3任期を超えて在任することのないように努めるもの」としたいと考えております。趣旨をご理解いただき、ご賛同を賜りますようお願い申し上げます。

平成19年第3回大田区議会定例会 区長開会あいさつ 大田区  より

 

 この多選自粛条例自体、最初からどうも内容があやしいところがあった。あれこれ探してみると犬伏秀一区議および柳ヶ瀬裕文都議(当時は区議)が書かれた文章が見つかった。条例案に途中で「本条例は平成19年10月1日現在区長の職にあるもの」との附則が付け加えられたという指摘がそれぞれ書かれている。実際この附則があるまま可決されたのか、現時点で条文にアクセスできていないのだがおそらく附則ありなのではないかと思う。つまり「多選自粛条例はとりあえず現職の松原忠義区長にしか適用されない。あとは次の区長が条例案を出せば良い」というような、法として意味があるのか首を傾げざるを得ないようなところがあった。しかもそれを、自分で撤廃してしまったということになる。

 

 こういう恣意的なお金の使い方しかしないひとを3期12年区長にしているということは大田区民は認識しておく必要があろうかとおもう。

 

 ただ、松原さんはどう思われようとも当選できる目があると見られているのではないかと考えている。昨年9月に隣の品川区で区長選挙が行われているが、現職濱野健さんが4選している。元自民党所属の都議だった佐藤裕彦さんと無所属の西本貴子区議も立候補、佐藤さんには立憲民主党日本共産党自由党都民ファーストの会が推薦したが結局投票率が30%台と低かったところに票が割れる事態となってのことだった。大田区も同様のことが起きることは狙われているのではないだろうか。

 

  争点がない選挙だと多くの区民が思って投票率が低いということになると実際にそうなる恐れがあるが、賑やかに議論されて区民としても暮らしやすくなるということになって欲しいと願っている。公益社団法人東京青年会議所が主催する区長立候補者の公開討論会は三名とも出席されて行われたそうで、そのことは良いことだった。ただ前日に行われた別の公開討論会は公務で欠席だったとのこと。

 

tokyo-jc.or.jp


大田区長予定候補者公開討論(2019)part1


大田区長予定候補者公開討論(2019)part2


大田区長予定候補者公開討論(2019)part3


大田区長予定候補者公開討論(2019)part4

 

区長選の論点 その1 多選防止について

 そもそも議論せずとも済むはずの内容だが、現職が条例を変えてまで再度立候補するような区政の状況にはないはずである。なお先ほど「松原さんは4選可能と見ているのでは」と書いたが、主語は彼ではなく政府与党の複数の人間であるかもしれないと考えている。それは例えば、次に述べる羽田空港跡地の購入などの案件があるからだ。

 

区長選の論点 その2 羽田空港跡地購入

 大田区の予算から積み立てた資金が国と大手企業の汚職に流用されているとしたら区民としてはどう考えたら良いだろうか。 次のハーバードビジネスオンラインの記事などはちょっと煽りが強いように思うが、書かれていることは実際に進行している。

 

hbol.jp

 

 国及び UR の所有地を当初東京都が購入する意思を示していたが2008年に撤回。それを大田区が 165 億円で購入、企業に貸し出して再開発する。企業、というのは再開発を受託している鹿島グループだろうとおもう。その賃料が月額換算 600 円/平方メートル、一方で同じ跡地のうち、国有地で住友不動産に貸し出される分の賃料が月額換算 5,200 円/平方メートル。大田区民は企業への割引分を負担するような格好で、その割引負担は月額約 3,500 万円、となる。大田区は50年の長期賃貸契約(国は年契約の模様)、また大田区としてある程度の雇用が見込めるということはあるかもしれないが、それで区民として納得できる額では無い。

 

 この構図を見ると大田区長が単独で何かを考えているというよりは、国策で進めているプロジェクトをなんとか進行させたいと考えるひとが、羽田空港跡地については大田区を使おうとしている、そのために言うことをきく現区長を継続したいと考えているのではないだろうか。月あたり3,500万円を使って受けたい区民への補助は多くあるのだが、この状態を見過ごせばいずれ財政悪化を理由に、例えば中学生まで受けられる医療費全額補助が年齢引き下げを実施されたりするかもしれない。実際は高校まで、あるいは20歳まで補助するよう改善いただけるとありがたいのだが。

 

区長選の論点 その3 蒲蒲線

  東急多摩川線蒲田駅から少し離れた京急蒲田まで延伸して接続させ、直接羽田空港に乗り入れできるようにするいわゆる「蒲蒲線」については松原区政下で継続して検討されており、この事業についても予算が積まれている。しかし今に到るまで実現にこぎつけていない。

 

 線路をどこにどう通すのか、難しいと言うのは分かる。とはいえこれだけの時間をかけてだらだら課題を残していると言うのは決断力とリーダーシップに欠けるとの謗りは免れない。

 

 素人目には環状八号線道路の下を通すのが一番良さげにおもうのだが、そう言う具体化に向かっての議論が区民としては聞こえてこないのだが。

 

区長選の論点 その4 個人住民税

 岡高志さんがポスターでも目立つところに掲げられているのが「住民税の 20% 減税」と言うもので、公約としては分かりやすいものではある。都内の別の区を歩いていた時にも選挙カーで住民税減税を言っている選挙カーに行きあった。

 

 毎月何万かの住民税を払っているものとしては減税は助かるのだけれど、区単位での減税をどのように実現するのだろうと分からずに聞いている。都民の場合いわゆる住民税には個人都民税と個人区市町村税の二種類あり、そのうち区市町村税を減税する、と言っているのだろうと言うことは分かる。ただ、現状区によって区市町村税の計算方法は同じであり、大田区が他区より住民税が安いなんてことは起きていないと理解していた。東京都主税局のサイトの説明からもそう読み取れていた。

www.tax.metro.tokyo.jp

 

 この文章をリリースしたところ、岡さんが読んで下さり「区民税条例で税率を定めているので、本当は23区同じ税率にしなくても構わない」と教えて下さった。

 

 きちんと確認できていないので別途調べようと思っているのだが、教えてもらうまでは住民税減税には特例的な条例を制定するのかと思っていた。個人的な意見では法律において「特例はなるべく無いように、シンプルにするのが良い」と言うのがあって、特例であるならば別のやりかたが良いので無いかと思っていた。

 

 

 別のやりかた、と言うのは具体的には補助がストレスなく受けられる、でもよい、と言うことだ。子供のいる世帯への補助については先に書いたが、他にも公営住宅入居補助、老人介護、生活保護、障害者支援を篤くするといった力の入れ方ができれば他区、他道府県との差別化が計れる。ついこの前にも埼玉県吉川市で障がい支援課の職員が訪問調査に際して、ALS患者の方が文字盤でやり取りされているのに「時間稼ぎ」と言い放ったそうで、誤った「水際対策」が仕事だと思っている自治体が多いようにおもえる。区費の範囲内で住みやすくした結果区民が増えて税収も増えるような施策はどうだろうか。どの候補者の公約でも、その方向を示していないとは言っていないので、実際にその方針に進んでくれるのは誰だろうか、と言いかえて考えることにはなるのだけど。