荏原町やまこ飯店の壁画

 東急電鉄大井町線荏原町駅前の商店街の駅から南下する通り沿い、商店街入り口付近に「やまこ飯店」という中華料理店が昨年まであった。三階建ビルの立派な店で、その壁に龍の壁画が描かれてあった。過去形なのは2021年4月頃、パンデミックによる緊急事態宣言が発令される中閉店を決めてしまわれ、さらには店がえにより秋頃に壁画も消されてしまったからなのだがこの壁画は残せば良かったのになと考えているもので、絵の書き手について調べて分かったことを書き残しておきたい。

 

荏原町やまこ飯店の壁画、2021年

 

 写真の画像があまり綺麗でないのは「Dispo」という iPhoneトイカメラアプリで撮ったものだから。探せばもうちょっと綺麗な画像が出てくるかもしれない。この大きさで書かせるというのはなかなかないのではないかと思われランドマークとまでは言わないが待ち合わせ場所として便利なぐらいには機能するインパクトを持っていた。なお龍が睨む先の建物左中段辺りには孫悟空猪八戒沙悟浄三蔵法師と思われる一行が書かれていて西遊記の一節をモチーフにしたものと分かる。

 

荏原町やまこ飯店の壁画

 

 この壁画に作者のものと思われるサインがあるのに気が付いたのはやまこ飯店さんが閉店を決められたあとで、その時点では(この壁画は残すだろう。残してほしいなぁ)と考えていたのだが調べてはおこうとチェックしていた。「Hiroo Saito」と読める。「さいとう ひろお」で検索すると割とすぐに見つかった。

 

荏原町やまこ飯店の壁画の署名 2021年

 

 齋藤博夫さん。主たる情報は神奈川県大磯町にあるギャラリーのページにあった。齋藤さんの作品の画像を何点かみることができる。いずれも穏やかな色調の風景画で、サインはこの壁画のものと同じ筆跡に見てとれる。

 

 このギャラリーでは何度も齋藤さんの作品展が開催されている。

 

2020年6月17日-7月30日 齋藤博夫 - 400年目の東海道 -

2020年10月1日-10月31日 齋藤博夫 - 400年目の東海道 -

2021年5月22日-6月27日 SAITO HIROO exhibition

 
 
 
 
 
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2021年11月3日-2022年3月27日 Exhibition SAITO HIROO

 
 
 
 
 
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 常設展でも齋藤さんの作品が展示されているようで、齋藤さんの作品のかなりの部分はこのサロン・ド・ダーユというギャラリーが保持されているのだろうかと推測される。おそらく実際に大磯のギャラリーに観に行ってお話しを聞くことができたら齋藤さんの壁画をてがけられたことがあるのか、どのような経緯なのか、というお話しが聞けるのかもしれない。なお1月に Instagram でサロン・ド・ダーユのアカウントにメッセージを送ってみているが半年近く経ってもリアクションはいただいていない。これはまぁ明らかに先方のご商売に関係ないようなメッセージだから致し方ない。*1

 

www.gallery-dahu.in

 

 他にもブログ記事で齋藤さんに触れた記事など断片的な情報はあった。すでに故人であるように読めるものがあったがその程度で確証はない。本当に情報が限られていて、略歴のようなものも見ることができておらず、いわゆる素朴派的に作品を残された画家でいらっしゃるのかもしれないと推測することしか出来ていない。

 

 さて冒頭に書いたように四階建てのビルの壁面は白く塗りつぶされてしまい描かれていた龍と三蔵法師一行の絵はもう見ることは出来ない。ビルの1階には建物に向かって右隣で営業していたカフェが移転して営業している。旧店舗のときからオープンカフェ的に使える感じで客が集まっていたカフェで、隣に写って店内が広くなってからも客がよく入っているようにみえる。又聞きでご店主がこの付近で別の店の従業員として働かれていた時の話を聞いたりするに、人に使われるよりも人を使って仕事をする方に向いている方なのかな、などと店の前を通るたびにおもう。また2階には長州人としての私の気に触る感じの名前の学習塾が入った。

 

 荏原町商店街のこの建物がある場所のすぐそば、品川道を超えて北馬込に入ったあたりは天沼という地名の場所で、いかにも龍が沼から現れて空にのぼりそうな名前の土地であり、とてもこの場所に合った壁画を齋藤さんは描かれていたのにと龍を悼んでいる。

 

mukunokiyasuo.hatenablog.com

 

*1:サロン・ド・ダーユの方より2022年12月にメールでご連絡を頂くことができた。荏原町の龍の壁画は齋藤博夫さんの作品で間違い無いこと、返信いただいた方は経緯も覚えておられ二十数年前にデザイン会社を経由して製作依頼があったこと、齋藤さんが2003年に逝去されていることをお教えいただいた。ここに御礼申し上げる。