追悼の礼儀

 祖母の十日祭(仏様の場合の初七日)で、神職さんに来て頂いた。また、お盆時期なのでそのあとも家に居て、拝みに来て頂く方をお迎えする。

 丁度正午の時NHKで戦没者追悼式の中継をやっていたので見ていた。柳澤厚生労働大臣が天皇皇后両陛下をご案内する役をしていたので、そうか、追悼式は厚生労働省が担当になるのだな、などと。正面祭壇に立派な柱が立ててあり、「戦没者霊」というようなことが墨書してあるが、祖母の葬儀を出したばかりの父親が「この柱は大層な値段がするだろうなぁ」と思わず現実的な感想を述べたりした。

 安倍首相が冒頭で挨拶を述べる。「あなたに追悼されたかない」と全国のテレビの前で言われていそうだが、挨拶の内容は戦没者を悼み、アジア諸国に損害を与えた事を悔い、戦後復興に粉骨砕身した国民を労うというごく平易な内容だった。

 気になったのは安倍首相が礼をする順番。まず天皇皇后両陛下に一礼、戦没者を祭る壇に一礼、会場に一礼。挨拶が終わって席に戻る際は逆の順である。

 気になるというのは「戦没者への礼が先ではないか」ということ。通常慣れていることなのだが、合気道において演武をする際は「正面に礼」、つまり神棚が最優先である。昇段・昇級試験のように師範が居られる場合も、神棚に礼、師範に礼の順だ。演武で見て頂く人がいる場合は会場に礼、互いに礼、と続く。

 細かい所はよろしいが神道における礼儀の大前提として、「神様」→「その場の筆頭者」と続くのが筋とするのではないかとおもう。安倍首相もまず戦没者を「神様」として最初に礼する対象とすべきような気がする。この追悼式ではそうではないようルール化されているのだろうか。追悼式はどの宗教にも偏さないから、神道的な礼儀にはよらないよ、ということなのだろうか。今まで追悼式などまじまじと見なかったので分からないでいるのだが、どなたかご存知だろうか?

 正午に一分間の黙祷の時間があった。須佐地区内の防災放送でも黙祷が呼びかけられたので、テレビを見ていた父親と私も黙祷をした。日本経済新聞を見ると、一面右下にも政府広報が厚生労働省から出されていて、黙祷が呼びかけられていた。これだけお金をかけてやっているのだから、本当に政府与党も「戦没者を追悼し平和を祈念」してほしい。また軍隊に国民を送り込むための準備としてやるのではなくて。

 私にとっては、以前住んでいた大阪市森之宮一帯に存在した大阪砲兵工廠や、国鉄(JR)京橋駅が大空襲を受けたのが昨日14日だったと思い当たった。猫間川について調べていた中でそういったことを知るに至ったのだが、如何に悲惨な光景だったか、如何に多くの非戦闘員が殺されたか、それを視覚的に想像するための契機にさせてもらっていて、そのことも思い出しながら黙祷をした。

→「終戦前日の死を刻む 数百人死亡の京橋駅空襲、慰霊祭」(asahi.com 関西)
 「いまも500ー600人が無縁仏=大阪・JR京橋駅空襲被災者慰霊祭」(livedoorニュース)

→「京橋の大阪大空襲鎮魂の仏様」(椋箚記)