導く

 2月1日(土)と2日(日)に東京都合気道連盟指導者講習会が綾瀬の東京武道館で行われた。当初私は1日が出勤予定であったため欠席、2日は大田区合気道会のl稽古、としていた。実際は1日の出勤は別の週末と交代になってぽっかり予定が空いてしまい気ままに世田谷区をぶらぶらひとりで歩いて来たりしてこれはこれで良い気晴らしになったりした。

 

 昨日の稽古では、指導者講習会で出た内容の復習、というか参加できなかったひとへの持ち帰りがあって参考になった。主に横田愛明師範による稽古からの持ち帰りであった。

 

 中学校の武道必修化を受けての細かい技法の定義や名称説明。「基本技」という言葉の定義の厳密化。などなど、の中で一番印象に残ったのが

 

 翁先生は「崩す」という言い方は一度も使われなかった

 

 というお話しだった。「導く」という言い方をされた、という。

 

 後だしジャンケンな話を書くと「崩すという言葉は使われなかった」と聞いた時すぐに(なら「導く」、かなぁ)と内心考えていたので概ねずれていない自分に少しほっとした。ただ普段の稽古の稽古を顧みるとどうか。自分が説明する段において「導く」と言っているかというとこれがそうではなく「(相手の体勢を)崩す」という言い方を普通に使ってしまっている。安心している場合ではなく、これは反省すべきことだと気がついた次第だった。

 

 些細なことのようでおそらくこの言葉の違いは重要なのだろうとおもう。武術としては「崩す」でも「導く」でも良いようなものだが

 

 合気とは よろず和合の力なり たゆまず磨け道の人々

 合気にて よろず力を働かし 美しき世と安く和すべし

 気の御技 魂の鎮めや禊技 導き給え天地の神

 

 と植芝盛平翁先生が道歌に詠まれたことの意味を追求すると合気道においては「導く」という言葉になるのだとおもう。

 

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阿部醒石先生に書いていただいた道歌の色紙 

 

 日本語で考えている分にはこの辺りの言葉の違いが曖昧でも済まされてしまったりするのだけれど例えば英語など他の言語で説明する必要がある場合はこの違いは峻別しなければならないことに気づく。"break one's balance" みたいに説明するのと "lead one's flow" みたいに説明するのとでは伝わり方は全く異なってしまうのだろうとおもう(この場合 lead が良いのか channel が良いのか usher が良いのかは分からないがご勘弁)。

 

 昔天之武産塾道場で稽古後に海外から来られている道場生の方と「気を合わせる、の合わせるというのはどう説明するのが良いんだろう」という話になったのを思い出した。fit、とかそういう単語を最初思い浮かべたのだがその母国語が英語の方は「harmonize、が良いと思います」と言われてとても腑に落ちたのだった。その方は翁先生の精神を理解されていたのだろうと今もおもう。 

 

第五十回全日本合気道演武大会の横田愛明師範の演武。ちなみに場内アナウンスは尾崎晌師範である