椋箚記

主に合気道とまち歩きについて

渡邉信之師範について私が知らなかったこと

 1980年代に「Do!スポーツ」という番組がテレビ東京系列で放送されていた。私が奈良市立二名中学校、奈良学園高校、大阪市立大学に在学していた十代だった頃の番組で、「なんで Play sports やないねん」 などとツッこんでいたことを思い出す。

 

ja.wikipedia.org

 

 マイナースポーツを取り上げる番組、というイメージがあった記憶がある。 上記 Wikipedia の記事は2019年12月時点で出典が示されていないようだが、ある程度正しいと仮定して読むとモータースポーツ、アウトドアスポーツの回が圧倒的に多いようだが時々武道・格闘技の回がある。合気道は二回、取り上げられている。

 

 二回目が私が大阪市立大学に入学し、合気道部に入部した 1987 年の放送で「極技空気投げ合気の世界」というタイトルである。私はその放送をVHSテープに録画したものを誰かに見せてもらっているはずである。動画検索を試みたが残念ながら見つけられなかったが、微かな記憶では渡邉信之師範が演武をされていたのを覚えている。それは座法で一教の抑えをされる映像を見た記憶なのだが(えっ)と思ったのを覚えている。文字にしてしまうと「渡邉師範は受けに触っていないのに受けは一教で抑えられた」という映像を見たのだ。

 

 Youtube で、公式のものではないが、その雰囲気が分かる動画あった。一教(と思われる)場面の静止画像と合わせて掲示する。時期が書かれていないが、背後に飾ってある写真が植芝吉祥丸前道主のものであるとしたら1999年頃の全国合気道演武大会だろうか。

 


【合気会】渡邉信之師範【八段】

 

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 当時の私の師範は阿部醒石先生だが、大学生時代はあまり稽古をつけていただく機会がなかった。ただ一回生の時に創部二十周年記念式典があり、その際に阿部先生の説明演武を見ている*1。阿部先生も時に触れる前に制したり投げたりを演武でされることがあった。つまり私はそういう技の現れ方もあり得ると考えるような主観の持ち主なのだが、その私ですら渡邉師範の演武は(また少し違うようだ)と感じていた。今改めて上記の演武を見ると「ああ、これは導かれるな、分かるな」と思う技と「これは受け(受け身ではなく)を取り過ぎではないかな、自分だと違う受けになるのではないかな」と思う技の両方があるように感じる。

 


Seiseki Abe sensei

 

 渡邉師範は今年、2019年8月20日に逝去された。 それを受けて大田区合気道会でも渡邉師範の指導を参考にした稽古をすることがあった。渡邉師範が整骨院を経営され、人体の仕組みにも造詣が深くそれが指導にも現れている……というようなことも知ることが出来た。

 

 整骨院と柔道の道場が一緒にあるような例は時々見かける。柔道創始者嘉納治五郎先生は最初柳生心眼流、次に天神真楊流に入門されているが、昔読んだ子供向けの嘉納先生の伝記では「骨接ぎの看板を掲げた家の門をいきなり叩いて柔術を教えてもらえぬか尋ね、入門を認めてもらった」というような書き方がされていた記憶がある。

 

 合気道の師範でも柔道整復師の資格を取られている方や、それ以外の整体技術を習得されている方も結構おられるのかもしれないが、意外と耳にする機会が少ない。子母澤寛さんの随筆で「砂泊さんという合気道の名手に肩が張るのを見てもらっている」という記述をみつけて軽く驚いたのは少ない事例のひとつだったりする。

mukunokiyasuo.hatenablog.com

 

 渡邉師範は磯谷いそがい公良氏が戦後間もなく創始した磯谷療法をまず学ばれたらしい。股関節の調整を重視するかも手法とのこと。この辺りの身体の仕組みと技との関係という理解についての詳細は渡邉師範のお弟子さんには引き継がれているのかもしれないが、合気道関係でそういった側面について記載している書籍や記事を今のところ見つけられていない。磯谷療法に携わっている方がネット上で公開されている記事がいくつかあって辛うじて概要がわかる程度だった。そのため渡邉師範について私のように「触らない技を演武でされる先生」とだけ思っているような不届き者は実は結構いるのではないだろうか。

 

 渡邉師範がどの様に学ばれ、その結果を稽古に反映されていて、その結果が演武にどのように現れるのかということはこれから様々な稽古の現場でなされるのであり、今回私も大田区合気道会の稽古でその一端に触れたのかもしれない。

 


2011年3月26日 渡邉信之師範 本部道場最終稽古 (抜粋) Mar 26, 2011 Nobuyuki Watanabe sensei's Final Class@Hombu Dojo

 

*1:私が卒業した後に阿部先生が道場に来られる回数が増え、ご指導いただく機会が増えることになる