死亡「事故」

 大相撲時津風部屋の力士、時太山俊さんが今年6月稽古中に死亡し、時津風親方及び兄弟子が傷害致死でこの度立件される見込み、というニュースを読んだ。武道なり格闘技なりで稽古中の死亡はあることながら、今回は確かにちょっとおかしいかもしれない、と感じた。所詮マス・メディアからの情報に過ぎないので、どんな恣意が加わった情報か知れないとは思いながらである。

 合気道でも、特定の師範(合気道部)の元で死亡者が連続して出たことが確かあったはずである。阿部醒石師範門下での先輩で、羽曳野道場でよく稽古して頂いた川崎さん(下のお名前が今正確に思い出せない)が「合気ニュース」の投稿され「いわゆる『壊し屋』についてどのようにお考えか」という編集部への質問が掲載されていたのを思い出した。川崎さんは若いころ空手の一流派と思われる拳法を稽古されていたという話を何度かして下さったことがあり、相当激しいものだったと思われるのだが、そんな方でも稽古で故意に相手に怪我させるような行為は認めておられなかった。相手を死に追いやるなどという者がいれば尚更である。

 川崎さんご自身が羽曳野道場での稽古前に急病で倒れられ、そのまま帰らぬ人となられたことと合わせて思い出しながら記事を読んでいた。

 恐らくは相撲でも過去急に死亡されるようなことは他にもあったはずである。『大相撲力士名鑑』なんて書物もあるのでそれを繰っていくと分かるのかもしれないが、ネット上で検索できるデータベースからは探せなかった。取り組み結果であるとか番付といった情報は検索できるようで、実際大相撲が好きな方としてはそういう情報の方が面白いのだろうが、こういう情報をこそ公にする必要があるのではないだろうか。

 今回の場合「死亡事故」ではなくやはり「殺人」として捕らえてもよいのかという気がするのが、実家に逃げ帰った時太山さんを兄弟子が部屋へ連れて戻っているという点である。彼は自ら望んで大相撲に入ったわけでもないようで、矯正の意味合いも入門にあったように記事からは読み取れる。ならば、近所でとっ捕まえたならともかく、逃げ帰ったならそのまま破門してしまえば良かったのではないかか。

 先日書いた気がするが、武道なんてものは無理やり人を集めて教えるものではない。礼を尽くして教えて下さいと頭を下げるものが、稽古する、というものである。もし集めないとやっていけないようならば、大相撲は武道ではなく、スポーツに分類されるものなのだろうとおもう。事業を継続する目的で無理やり人を集めなければいけないとしても、人を殺さないと続けられないスポーツなんてものは不要だ。その点について大相撲協会は明確に方針を出せていないといけないと考えるが、実際は曖昧なまま続けてきているのではないだろうか。