胡麻斑髪切

 今年実家の須佐に帰っていたとき、長男が庭で虫取りをしていて、「すごいのがいた」と呼びにきたことがあった。

「くろくて、しろくて、しまうまみたいで、すごいの」というのでなんだろうと庭に出てみると、これがゴマダラカミキリだった。おお懐かしい、と虫かごに入れてやった。長男は自分ではよう触らない。

 子供時代を過ごした奈良市学園前では、街路樹のプラタナスゴマダラカミキリが付き、それをよく捕まえて飼ったりしていた。だから私には見慣れた虫であるが、長男は初めてのようだ。

 写真を撮っておいてやろうとデジタルカメラを取りに家に戻ったが、庭から「おとうさんっ! たすけてっ たすけてっ」と段々泣き声にになるので慌てて庭に走って出た。長男が自分のシャツをつかんで虫を振り払おうとし、パニックを起こして号泣している。仏心を出して虫かごの蓋を開けたが捕まえて出してやることも出来ずにいたところ、カミキリは彼の想定をはるかに超えた素早さで外に出てきてしまい、かつ彼の身体のうえを歩き回っていたらしい。みると背中側、首の後ろ辺りを歩いていたので大笑いしながら取ってやった。

 その後カミキリは放してやったが、翌日も庭の柚子の木に取り付いていた。あとで調べると、ゴマダラカミキリが好んでつく木には柑橘類も含まれるらしく、柚子を目指して我が庭に来ていたらしい。そう知っておれば放さなかったものを。この柚子の実を冬にお鍋に活用したりするので鉄砲虫を産み付けられて枯らされてははかなわない。先ほど実家の父親と電話した時にそのことを話したが、もちろん父親は構わんと言って笑っていた。