日本の出版業界について

 大阪市立大学四回生として法律を学ぶ学生だった1990年から1991年の約1年間、難波にある高島屋大阪店の書籍売り場でバイトをした。よく遅刻をするいい加減なバイトだったが、たまたま担当不在だった漫画の棚を他のバイトと作らせてもらったり、好きなことをさせてもらった。

 小売業に多少なりとも携わるのが、母親の実家である薬屋の手伝いをした時以外なかったので(それも幼稚園のころの話だ)当時それほど違和感を持っていなかったが、客注だとかスリップに店印を押しての追加注文だとか、特殊な商取引を覚えた。書店という世界と、百貨店という世界を同時に見る機会を得た。

 その後SEとしてサラリーマンになり、結果として様々な流通業界の場をのぞかせて頂くことになったが、その結果得た感想が「出版業界は、ぬるい」というものだった。

 下記ブックレビューでジュンク堂の副店長さんの書かれたものに興味を持ち、大田文化の森で借りてきて読んだ。

→「『書店繁盛記』はトラブル対策のバイブルだ! (超ビジネス書レビュー):NBonline(日経ビジネス オンライン)

 読んで改めて思ったのが、16、7年立っても出版業界はそれほど変わらず、「ぬるい」ということだった。

 例えば私が担当して給料をもらっている流通業さんで、もし担当システムの問題で物流に影響が出たとしたら、それこそ殺されんくらいに罵倒され、嫌味を言われ、それでもきちんと報告をして事後策を取り、ということになる。書店の客注など、忘れた頃に納品されるということが今この瞬間にも行われているのだが、そのような暢気な業界は少ないのではないか。

 現在自宅の広さに限りがあるため書籍の購入量も減っているが、その減っている書籍のほどんどはアマゾンで買っている。

 ただ、ISBNがついていないような、アマゾンに載らないような書籍で面白いものがあることもここ数年で気が付いた。そういった書籍がより広く目に触れ、読まれ、購入されればいいと考えているし、そのような仕掛けが作れないかな、というのが2年くらい前から考え、行動していることではある。

『書店繁盛記』の中で、関東と関西の顧客の傾向の違いに言及したり、文脈から推測して東京に比べて神戸の顧客は、ということだろうが「顧客の情報感度が鈍い」と正直に述べている点があったりする。一方で、無名の作家を発掘して、売って、作家が大きくなっていくのを見届けたい、という書店員の話が出てきたりする。それなら「書店が文化を創り、顧客を育てる」という不遜な思いが書店経営にあって良いのだろうとおもう。私が「マチともの語り」で書くにしろ、何かアイデアを出すにしろ、それを起点に何か起きないだろうか、という思いは常にある。

書店繁盛記

書店繁盛記


 最後の方に、書店員の給与水準は流通業界で下から二番目に低い、という話も出ていた。その原因が出版社にあるのか、出版取次にあるのか、書店の努力不足なのか、いろいろ言いようはあるだろうが(記述中では、出版独自の商慣習を説明して具体的に引いて説明している)、根本的に仕組みを変えないと改善されない問題のような気がした。

 変わった客、マナーのなっていない客、クレーマーなども出てくるが、私はなんとなく類友のような気がした。辛らつ過ぎだろうか。