『邪魅の雫』(京極夏彦)
大田文化の森で京極堂のシリーズの最新刊を借りていた。このシリーズはだいぶ以前、深夜まで読み耽ってしまうので遅刻が多くなり、仕事場で上司にチェックされるに至ったこともある。前作の『陰摩羅鬼の瑕』は、読んでいて途中で結末を予想できてしまった。今回も途中でこういうこと? とは思ったが楽しませてもらった。
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/27
- メディア: 新書
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榎木津は、爽快な存在だ。この長さの物語を読み進めるに当たって、飽いてくるときもあるのだが、その時に彼が登場すると再び読み進めるエンジンになる、と感じる。中禅寺に加えてこの人物を配した創作というのは凄いものだと、いつもおもう。もしこんな人が居るとしたら、こんなに豪快に居られるだろうかという気はするが、そもそもこんな人が居るかもしれないという現実感を書けているところに力量があるのだ。
その榎木津が、今回はちょっとだけ陰鬱だ。もともとが爽快な人だから、ちょっと陰が入っても相変わらず爽快なのだが。
そういう話とは別に、本作には「帝銀事件」というテーマも書かれている。平沢貞通は冤罪らしい、くらいしか思っていなかったが、改めて描かれた結末が通ってしまっているのだと感じる。私はこういう出来事を時系列でつなげて認識することが苦手で、とはいいながらそれを年表にまとめてあったり、自分でまとめてみることは好きだ。そういうところからも、物語を創作することが出来るのだなぁ。