武士道のはなし

 ある場所で引用しようかとおもって、久しぶりに斎藤一人さんの著書を倉庫から引っ張りだした。

 斉藤一人さんは所得税の納税額ランキング(いわゆる長者番付)で常にトップを争う位置にいるということで有名なひとである。当然のことながら、書いてあることがいちいち肯けるとは限らないのだが、結果的に参考にしている場面が私には多々ある。

 その理由は、この方の話(この本は講演録である)の潔さにある。私は最初にこの『変な人の書いた買ったら損する本』を読んだ時に(これは、武士道だな)と思った。

 武士道というのは、侍だから持っているというようなものでなく、武士という生産をしない階級としてどう生きるか、ということから発した精神の粋といったもので、実際には身分なんぞに関係なく日本人は持っていたし、今も持っているべきものだ。
 実際幕末に旗本の大多数が役に立たなかった代わりに農民身分だったり商人だった人物が大変な役割を果たしたりした。確か勝海舟も先祖代々の武士ではなく、旗本の株を買った家のせがれだったはずだ。

 斎藤さんは自分は「商人である」ということを常に言うし、その観点で話をしているのだけれど、自分にも人にも潔さを求める。非常に、分かり易く。その潔さが半端でなく、武士道の精神というものは、こういうひとに残っているのだな、と思ってしまう。


変な人の書いた買ったら損する本

変な人の書いた買ったら損する本

 何故そんなことを改めて思ったかというと、最近テレビだのネットだのでアルベルト・スギというイタリアの画家の絵の盗作をして自作として多数発表してる日本人の画家についての報道を見てのことである。絵にしろ音楽にしろ、尊敬の念を捧げた上で「カバー」する、というのはあるが、この日本人の画家はそれをしていない。だけど、正当な行為なんだと言い繕おうとしている。

 かれにはそもそも良心があるように見えないし、ましてや日本人としての精神の何か美しいものを保持している訳もないように思える。そういう人物の存在が海外まで知れてしまうのは誠に残念なことだ。

 さらにまた別の話だが、村上世彰氏がインサイダー取引で逮捕されそうな様子である。記者会見が誠に芝居がかっていたり、「儲けすぎたから嫌われた」というような自意識過剰な愚痴であったり(もし彼が尊敬されていないとすれば、その経済行為に中身がないからではないだろうか。例えば本当に阪神の経営をより改善させようとして提案しているのか、提案自体株の売り抜けのための手段なのか、ということだ)、鼻につく点はある。実際、本当に綺麗に株式売買の世界から去るのか、何かの手段で実はまだ株式売買でもって利益を得続けようとしているのか、分からないと思っているが、もし記者会見の通り引退するならば、身の振り方についての美意識はあったということにはなる。

 なんてことを思いながら本を読み返した。