全日本柔道連盟の振る舞いから被る迷惑

 全日本柔道連盟でふたつの問題、選手への暴力と助成金の不正受給の問題が続いている。

 ちょっと前だが、NHK の論説でこの柔道に関する問題を取り上げているのをみていて、上村春樹という人物が全日本柔道連盟の会長と講道館の館長を兼任しており、チェックが働かなくなっていたという状況について初めて知った。それまでは講道館の館長は2009年より嘉納家ではなくなっていたことも知らなければ、上村春樹氏以前も講道館館長と全日本柔道連盟会長は嘉納行光氏の兼任であったらしい事も知らずにいた。

 例えば合気道を引き合いにすれば、合気会は今も植芝家が道主を務められている。一方で都道府県の連盟を束ねる全国合気道連盟の理事長は私がお世話になっている尾崎師範が務められていて分掌が機能している。

 柔道競技において組織経営に関するチェックが機能しなくなっていた、という病理は根深いようにみえる。上村春樹氏は全日本柔道連盟の会長は辞任したが講道館館長は引き続きつとめておられるらしい。しかも辞任後にマスメディアの記者の前で反省していないと評価される態度を取っていると報じられている。

 この状況をみていて困惑するのが、柔道では勿論、他の武道・武術・格闘競技でも組織が信頼をおかれないような事態が起きそうだということである。

 合気道でも空手でもなんでも良いが、とある道場でセキシャル・ハラスメントや暴力虐待、不正経理といった事象が起きていたと仮定する。それを訴えたいと考ええているひとが居られたとして、通常はその道場の中、あるいは組織の中で解決できれば良い。ところが最初から(無視されるのではないか、それどころか不利益を被るのではないか)と認識していたとすればいきなり刑事告発やマスコミへのリークといった手段を取ることが考えられる。それをおもうと他人ごととして評論している気分では無い、という気がこの間ずっとしている。

 各団体としては地道に信頼をひとつづつ積み上げていくという道があるだけだと思っている。私などは道場で稽古させてもらっているひとりの人間に過ぎないのだけれど、それでも子供達や学生さんをお教えするような場面もあるわけで、教えている瞬間は親御さんや学生さんからは「組織の側のひと」に見えている。ならば常に組織の方針を毀損することなく正しく振る舞えるようにこころがけようとおもう。

 頭部外傷(脳震盪)や熱中症の対策について指導者講習会で受講した内容を受けてここで書いているのも「正しく振る舞う」という意思の現れである。柔道においても組織上部に目をやりつつ現場から改革が起こっていくことを望んでる。