選挙に当選するには

 大田区長・区議の選挙をしていた時の話だが、仕事場に出るのに大森駅前に出ると、必ず同じ場所、駅横のローソンの斜め前辺りに立っている候補者が居た。荒木秀樹氏という候補らしかった。

 この方が何か演説をするでなく、黄色いジャケットを着て傍に一本のぼりを立てて、ただ出勤していく人たちに挨拶している。それも声を張るわけでなく、何を言っているのか聞こえてこない感じである。

(こんなに自己主張なくて、いいのかな)

 と思いながら通り過ぎていた。この人は結果的には、当選した。まぁ、大田区ローカルの議会だから、そんな人物が議会に入っていてもいいのかもしれない。完全な無所属のようで、地元で会社経営していた人が区議になっているらしい。

 珍しいこっちゃ、と思ったのが、選挙結果が出た翌日にもこの人物は同じ大森駅前に立って、ありがとうございました、と道行くひとに御礼をしていた。あまり選挙後にこういう行為をする人を見たことがない。することが良いのかどうかにわかに判断し難いが、選挙が終わった途端に積極的な支援者以外の方は向かない、という立候補者がほとんどであるように感じているので、これは奇特といえるだろうか。もっともこの日だけだったが。

 父親が話していたのを思い出したのだが、奈良に住んでいた時に、最寄り駅の学園前駅で落選した日から毎日演説しているひとがいたそうである。その人は後に民主党から当選を果たし、耐震偽装問題について国会で与党を大変鋭く指摘していた、ということだった。聞いたまま名前は忘れていたが、改めて調べてみるとおそらく馬渕澄夫議員のことであろう。

 誰しも真似せよ、ということではないが、選挙で選ばれるには少なくとも気迫とアイデアの両方が、継続して必要なのだろうなとおもう。