タクシー仕切り板に見る失政

 関西でタクシー強盗が続いているが、大阪近辺では運転席と後ろの客席の間の仕切り板をほとんどののタクシーが設けていないとテレビニュースで聞いて以外に思った。そんなに頻々とタクシーに乗るわけではないが、東京で乗るときには設置されていることが多くなったような気がしたので全国共通かと思っていた。そういえば数ヶ月前、神戸から伊丹空港まで二度ほどタクシーを使うことがあったが、仕切り板はなかった気がすると気がついた。

 それでなくともタクシーは不況のあおりを受けるし、利に敏いであろう大阪や神戸では運転手さんも無駄な(無駄じゃないんだけど)出費はしないだろうという気がする。

 また、大阪などでは仕切り板をつけると「なんだこれは。俺を疑うのか」と文句をいう客もいるので、という理由も聞いた。これだけ続けばそんな客もいなくなるだろうが、ゼロにはならないんだろうなぁ。

(今回のタクシー強盗発生歴)

  • 12月29日 5時35分頃 兵庫県稲美町 運転手殺害
  • 12月30日 7時25分頃 東大阪 運転手殺害
  • 1月5日 4時45分頃 松原 運転手軽傷
  • 1月6日 3時20分頃 高槻 運転手軽傷 犯人逮捕

 運転手さんが嫌がらなければタクシーに乗った時に世間話をする。以前は「最近景気はどうですか」なんて文句から始めるが、これだけ不況が進むとこの文句も使いようがなくなった。

 以前このせりふから話をしていて、タクシーの規制緩和についての恨み節を聞くことが何度かあった。小泉純一郎政権下で2002年に行われた。

 規制緩和の詳細を調べようとするとwikipediaには載っていない。自分で調べて更新反映すればよいのだろうけれど、これが調べても分かりにくい。自分も法学部在籍経験者だが、道路運送法を読んでもどこがバスでどこがタクシーなのか分からないように書いてある。国土交通省のサイトや一般サイトなど漁りこういうことかと読解した。

  1. タクシー新規参入 免許制→認可制 許可申請の審査基準(H20.6.30改正,PDF)許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準(H19.3.22改正,PDF)−道路運送法 第23条の2第1項第2号らしい
  2. タクシーの増車  認可制→届出制 法令部分わからず
  3. 事業の休止・廃止 認可制→届出制 〃
  4. 運賃       認可制→認可制だが緩和 〃

(↑参考)タクシー規制緩和って何?自交総連サイト内)

 この規制緩和でタクシー台数が増え、運転手の収入も全体的に下がった。大阪は御堂筋、梅田新道の交差点を金曜日の深夜に自動車で通りがかってしまい、全車線を客待ちタクシーがふさいでしまっていて動けなくなりえらい目にあったことがあった。思えば規制緩和直前だったと思うのだが、緩和後の大阪タクシー業界の状態は推して知るべきかとおもう。

 とすれば、仕切り板が普及していなかった遠因は2002年の規制緩和にもあったといえるかもしれず、ポイントを外した法改正を行った政治と行政に罪があると言えるようにおもう。

 更にいうと、タクシー業界の苦境を受けて再度規制強化の動きがあるらしい。そこへ持ってきて不況が進んでいるから、なんとか収入を得ようとしている人たちの道を一本断ってしまうことにもなりかねない。元々タクシー業界におられた方からすれば最もいい状態になるように制御が必要だろうが、一度判断を誤ると状態を戻すのには倍以上の労力がかかってしまうといういい例になっている気がする。こういう失政については立法・行政にペナルティ制を設けないと抑止されないのではないか。

 唯一今回の件で仕切り板のメーカー、卸、タクシー内装業者さんは仕事が入ってよろしいことかとおもう。調べると「大雄」という埼玉のメーカーさんの名前が出てきた。中小企業に仕事とお金が流れるようなことはいいことだが、できれば亡くなる方が出る前に普及してほしかった。現在運転手席の後ろだけが多いが、助手席まで仕切っていて、運賃のやり取りのための口が開いているくらいでいいと思うのだがどうだろうか。