東都タクシーに乗って

 朝仕事場に出るとき、京浜東北線が遅れている、という情報がナビタイムのメールサービスから入ってきていたのだが、「混雑により」としか書いていなかったのであまり気にとめていなかった。それが大井町まで移動したらホームに人があふれていて、改札を出るだけで時間がかかるほどだった。山手線の田町駅で人身事故があり、その振り替え輸送で尋常ならざる混雑を招いたらしい、と分かった。

 私は大井町りんかい線に乗り換えるのだが、とてもホームまで降りていけないほど人がいたし、バスもタクシーもすぐに乗れない状況だったので、結局青物横丁まで歩いてタクシーを拾い、仕事場まで出た。普段青物横丁まで歩くなんてしないがいい天気だったし、桜も咲いていて散歩のような道行だった。実はりんかい線で混んでいたのは埼京線(渋谷や新宿、池袋)方面であり、普段使っている新木場方面行きは結構すいていたとはあとで知った。いずれにせよ、ホームまで降りられない状態だったのだが。

 タクシーは東都タクシーの車だった。いま電車はだめですわ、と話をふると運転手さんは「へえ、そんなにひどいですか。そういえば品川から来てすれ違うタクシーがみな実車でした。普段そういうことはないですからねぇ」と乗ってこられた。

 人身事故だからおそらくは飛び込みでしょうねぇ、という話から運転手さんが「派遣切りとかいってますけど、うちの会社にくればいいんですよ」という話をしてくれた。

 東都タクシーさんでは常に運転手を募集していて、既に運転手として勤めているひとが募集者を紹介すると、募集してきたひとに20万の支度金、紹介したひとに20万の報奨金が出るのだという。「(タクシー運転手のための)ニ種免許取得まで教習に行かせて、1日1万の保障が出ます。独身寮も、家族寮もありますよ。本当に困っているやつを紹介したら、私は20万のうち10万だけもらって、30万を渡してやるんですよ」とのことだった。

 私はタクシーの運転手さんと世間話をするのが割りと好きだが、タクシーの自由化に不満を唱える意見を聞くことが多く、タクシー会社が積極的に運転手さんを募集し続けているというのは意外だった。だが今日の運転手さんによると「他の(大手の)タクシー会社さんはどこも、新聞なんかに募集の広告だして人を集めていますよ」とのことだった。

 調べてみると実際運転手さんの言うとおりのようで、優秀な人材を求めているという点についてはタクシー業界も変わらないらしい。知らない間にこの業界でも淘汰が続いているのかもしれず、ちょっと勉強になった。