図書館の危機

 1年半くらい前に図書館のあり方について書いたことがあった。だしに使った『図書館戦争』はその後ざっと読んだが作者の有川浩さんが前書書かれているように「テレビドラマを見ているよう」で、私はあまりそそられなかった。それはさておき。

図書館と戦争犯罪責任と - 椋箚記(2007年3月18日に書いた文章)

 主題は戸井田とおるという姫路選出の衆議院議員が、南京事件についての書籍『レイプ・オブ・南京』(アイリス・チャン著)が真実でない記述をしているという理由で国立国会図書館の蔵書から外すよう発言した、ということだった。そのような発言が通るようでは『図書館戦争』の世界が実現化してしまう、ということを書いた。

 その時にそんなバカな要望は通ってはいけないという意識で書いていたのだが、まんざら笑って聞いていられない話があった。

てえへんだ、てえへんだ…国会図書館が裁判権放棄を裏付ける文書を急きょ閲覧禁止に! - 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)

こんなふざけた答弁ができるのも情報の隠蔽を許しているからだ!〜対米兵裁判権放棄問題パート2 - 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)]

 日本とUSA間の「米兵の犯罪に対する裁判権を放棄する」という密約について「なかった」と外務省は回答していた。実際には密約の存在を裏付ける文書があり国立国会図書館に所蔵されて閲覧可能だったのだが、先月から閲覧対象外とされてしまった。それは、法務省からの申し入れを国立国会図書館が受け入れたからだ、という話。

法務省国立国会図書館に申し入れた」という点は軍事問題研究会という団体からの話であるようなので、情報の確かさにはあやふやなところも感じるが非開示化は事実なので、私も国立国会図書館を非難したいとおもう。

 折しも毎日新聞社の「WAIWAI問題」についての釈明記事について真実でない旨の調査報告がネット上で出ているが、その調査は図書館に所蔵されているマイクロフィルムをつぶさにチェックして判明したものとのこと。図書館の潜在能力が評価されたところであるのに。

図書館と一般人が新聞社の脅威になった日 - 図書館情報学を学ぶ

 今回の件は行政官僚から国立国会図書館に圧力をかける道具が見つかったともいえる。表向きは国立国会図書館の利用規約のうち「館長は、人権侵害等により利用に供することが不適当と認められる資料の利用の制限をすることができる」での非開示化だが、実際は内規により官庁から要求があれば従うこととなっている、ということだが、この二重ルール本当だろうか。

 国会図書館の館長は2005年に「その待遇は国務大臣と同等とする」との規定が、国立国会図書館法から外されたのだという。給与が高額になってしまうため、とのことだが、行政関係で他に削るところはなんぼうでもあるはずでこれは図書館をコントロールする意図が司法と行政にあるのではないか。これらの法律の動きを充分に追い切れていないが、是非野党には蒸し返してほしい。とはいえ鈴木宗男氏以外の政治家に頼っていてもだめなような気がするし、当面ネットで書き続けるか。

 在野からできることがあるだろうか。国立国会図書館に開示要求をして効果があるものなのだろうか。NDLのWEBサイトには問い合わせ先の電話番号とメールアドレスがあるが、メールは「ウェブサイトについての問い合わせのみ」となっている。電話でみんなで問い合わせをしたらすぐパンクするだろうし通常業務に影響しそうだ。他にできることはないだろうか。