大森の夜空に津軽三味線

 晩に大森駅に帰って、駅ビルの中の「ブックオフ」に立ち寄ってから山王側に出てきたら、津軽三味線が鳴っていた。タクシー乗り場の横の、東急バスの路線図だったか、付近の地図だったかの前に携帯の椅子を据えて、弾いているひとがいる。

 三味線の音を評価できるほど聞き込めているわけではないとおもうが、とても冴えた美しい音だとおもった。しばらく聞いていたい気がしたが、前日から風邪をひいて体調いまいちだったので、そのまま天祖神社の階段を上りながら聞いていた。

 特に名前を掲げてひいているわけではない。前に小さな籠をひとつ置き、弾いている。ああいう時、おもわず小額なら籠にお金を置いて行きたいとおもうときがあるが、今月通院などでお金が早めに飛んでいったので、もしお金を入れたい衝動にかられたとしても躊躇したかもしれない。

 そもそもそういう時に、スマートにお金を出すことが自分には出来ない気がする。財布出して中身のぞいて、幾らにするのか考えてやっても格好悪いしなぁ。そういうダサい感じになってしまいそう。

 ネットのように、誰も見ていないところでワンクリックで投げ銭を投じていく、という類のことが出来たなら、お金を置いて行ったかもしれなかった。駅の反対側でお祭りをやるようで、ポスターの演目に津軽三味線も載っていたようだった。その演者の方が挨拶代わりに弾いておられたのかもしれない。