強制退去について、再び

 不法滞在による強制退去について2つ続けて文章を書いたのが昨年の1月。その際の自分の考えは下記のようなものだった。

  1. 一部の国籍や情状酌量などで特別扱いをすべきではない
  2. ただ、現在の量刑は厳し過ぎるので、法の運用ないし立法そのもので適正化すべきではないか


 この時は法律や入国管理局の問題を論じたのだったが、今度はちょっと違う話。もっと深いところに根ざすことのような気がする。

ワイセラ・ワイリムさん:高校駅伝優勝・ケニア留学生、退学処分で帰国へ−−愛知 - 毎日jp(毎日新聞)

 愛知県豊川市にある私立豊川高校の生徒であったケニアからの留学生が帰国中に実家が強盗に遭いパスポートも奪われた。再来日できないうちに市立豊川高校は留学生を留年とし、かつ出席日数不足を理由に退学処分にしてしまった……という。

 留学生には支援者がおり、日本で保護者になると申し出ている方もおられる、とは別の記事で読んだ。それでも結局彼女は在留期限が切れ、帰国せざるを得ないらしい。

 ケニア大使館から市立豊川高校に直接人が赴き抗議したが、受け入れられなかった、と記事にはある。

 情報が少ないのでなんともいえない。例えば彼女の素行に高校運営者の意識に沿わないところがあり、排除したいところがあったのかもしれないが、そのような「言い訳」があったにせよ、世に認められるものではないであろうとおもう。それでもこの行為が法に触れないらしい。留学生は日本の実業団で競技を続ける意思があるにも関わらず「法律に則って」自国に強制的に帰されることになるのに。その事がこの出来事での一番の問題点であろうかとおもう。

 陸上競技について詳しくないので、市立豊川高校というのが所謂強豪高なのか知らない。もし留学生の活躍が一助あって長距離走で名が知られるようになった、ということであればもう用は済んだと考えたと思われても仕様が無い。

 興味があるのは、他にもこの高校のように、留学生を受け入れる素地がハード面、ソフト面で無いのに短期的な成果を求めて人を集めている例が無いのだろうかということである。留学生の使い捨てを見過ごすような法律の国に、法で決められているからと不法滞在による国外退去を命じることが許されるだろうか。

 国外退去処分をやめよ、と呼びかけているのではなく、法にバランスと配慮が欠けているので補わなければならない、と呼びかけているのだが、届くだろうか。

 なお、以前書いた「量刑」については特別在留許可について一定の基準があるらしい、というのが下記記述から分かった。この基準にもまだ見直しの余地があるのではないだろうか。

e-politics - 外国人政策/カルデロン一家問題


 更に法律というより信義則のレベルの、他国の人への偏見というようなものについては、豊川という地への偏見で返すしか私には手段がない。

 ケニア大使館から公式に抗議文などが出ていないか検索してみたが、流石にそこまでは見つけられなかった。