奈良の宿

 ワールドビジネスサテライトを見ていたら、大井町のマルイの跡に開店したヤマダ電機を取材していて、身近な風景が映っていた。

 更に特集で、奈良で新しくホテルを建設する事業が進んでいる、という話題を放送していた。見るとJR奈良駅前の再開発地にホテルを建設中らしい。数年前に奈良学園高校の同窓会に出席した時はあの辺りだった。確か建築偽装の被害にあったビジネスホテルもあり、テレビで見た記憶がある。

 何でも奈良県は全国で宿泊施設数が最下位であるらしい。以前大阪在住でかつ独身時、奈良の実家に立ち寄ったあとに大阪とは反対の奈良市街に立ち寄ることがあったが、夜8時くらいには店もほとんど閉まっている。近鉄奈良駅前の、東向商店街とか、餅飯殿商店街という賑やかな場所がそうだった。観光地にあるまじき状況だな、と思っていたが、その後世界遺産に登録されても状況が改善されていなかったというのがすごい。奈良県や各市の観光担当部署は何をやって給料をもらっていたのだろうか。とはいえ、遅ればせながら観光客の減少に気づき、改善の動きが出てきたということだ。

 自分の地元だったので宿泊場所はあまり気にしたことはなかったが、「奈良ホテル」が定番という気がしていた。綺麗なホテルと聞いているが行ったことはない。綺麗だが古いから、ここらで景観を損ねない程度でかつ新しいホテルがまた新たに出来ればいいとおもう。そういえば北杜男さんのエッセイで奈良に行った時「奈良ホテル」に泊まるべく近鉄奈良駅前でタクシーに乗ったが、「新館の方」と追加で付け加えると苦笑いされ、他の運転手に「新館だってよう」と言った挙句すぐ降ろされた、新館は駅前にあった、という話が書かれていたのを思い出した。『どくとるマンボウ途中下車』辺りだろうか。昔から奈良のまちは旅行者を迎える心構えがなってなかったと思われる。

どくとるマンボウ途中下車 (中公文庫)

どくとるマンボウ途中下車 (中公文庫)

 昔登大路の大仏殿近くに外国からのバックパッカーに人気の宿があり、宿のおばさんは英語も何も全く話せないのだが客を国名で「おーい、フランス!」などと呼ぶと宿泊客同士でコミュニケーションを取ってちゃんと分かってくれた、といういい感じの話を新聞で読んだ記憶もあるが、その宿ももう今は無いのではないだろうか。