不法滞在問題を奇貨とするには

 不法滞在についてのニュースをテレビでみて、子供が就学していて強制国外退去を命じられる、あるいは執行される例が多いことを知った。大人はともかく、日本語しか話せない子供がたとえ母国とはいえ、意思と関係なく戻されて生活せねばならない状況に追いやられるということには、考え込まざるを得ない。

 私としてどう考えるかというと、まず特別扱いや例外措置は採るべきではない。これは私が学生時代に法学部での師から得た基本法則で、たまに書くことがある。

国籍条項の考え方-椋箚記

 一方で「悪いことをしたんだから国外退去は当たり前」という意見にもどうもしっくり来ない。家内も一緒にニュースを見ている時にそのような感想を述べたので、そうおもっているひとは多いかもしれない。不法滞在者による治安の悪化を想起するだろうし、不法滞在者が市民サービスを受けることに不快感をもつかもしれないし、不法滞在者に職を奪われる! と激する人もいるかもしれない。

 観光ビザで入国してオーバーステイしている例が多いのか、偽造パスポートで入国するのが多いのか数値を得ていないのだが、たとえばニュースでとりあげられているカルデロン家の両親は生活のために日本に来たのだろうと推測される。オーバーステイ状態を解消する意思もあったということなので、あえてランク付けするならば、悪質でないということになるのではないだろうか。

 それを一律に処理しようとしているのは、法務省や入国管理局が「仕事してますよ」というアリバイ作りがしたいというのが先に出ているのではないかな、と感じる。

 日本語を完全にマスターし使いこなせるという外国人がいるのだから、いかに気持ちよく日本語を使ってもらって、日本のイメージも上がるように、かつ日本にとって実益も上がるようにするには、そのひとをどう扱えばよいのか、と考える方がよろしいのではないか。帰化の条件ではないけれど、「この条件をクリアしていれば、在留許可を出す」というような、国外から注目と関心を集めるような案をぶちあげるとか。

 政府開発援助(ODA)を何億円拠出してたいして感謝も評価もされない、というよりは、不法滞在問題を有能な人材が集まるきっかけに変えるような奇案のほうが実は効率的ではないか。国外からの侵入に怯えたり腹をたてるよりも、ODAだの特殊法人への天下りだの計画の甘い施設の造営だの、立法・行政での無駄遣いや不正を糾すことを優先するのがよろしいかとおもう。