四方投げの足捌き

 10月26日の土曜日、大阪市立大学合気道部の関東OB会研鑽会を綾瀬の東京武道館で行ってきた。この稽古に、京都工芸繊維大学合気道部の若いOBが1名参加して下さった。面白いことに現役大学生だった時のつながりで来てくれたのではなく、卒業後若いOB同士で会ったのが縁でこの稽古を知って興味を持って下さったらしい。

 京都工芸繊維大学合気道部は大阪市立大学と同じく天之武産塾門下である。彼の黒帯は阿部醒石師範に昇段試験をみていただいたものだという話しで、彼の口からまだお元気だった阿部先生の話しを懐かしく聞いた。

 この研鑽会はOB会内の自由な稽古なので、今回は折角参加してもらったのだからとゲストの彼に基本技を大学合気道部でどう説明していたかやってみてもらいながら稽古を進めた。同門ながらかなりしっかり説明の型ができていて、聞きながら参考になることが多々あった。

 その中のひとつが四方投げの説明。耳で聞いただけなのでズレていたらご容赦。

「内足を出す時に、相手に近いところに出ると相手が立ち直ってしまうので近寄りすぎない」

 というような説明だっただろうか。

四方投げで内足を出す時」というのは、合気道をやっている方は分かるだろうとおもうのだが、植芝守央道主の教範動画があったので一番良い例として示させて頂くと、以下のスナップショットで白い丸で示した相手に近い方の足のことだということになる。そもそもこの足は相手にも周りにもみせるものではないのでスナップショットでもブレていて見えない。動画では 6:55 辺りからが片手取り四方投げの説明部分となっているので合わせてみて頂ければ。

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道主植芝守央,合氣道技法教範- YouTube

  この足を相手の前に踏み込んでしまう方が結構多い。そのことを説明の型として取り込んでいるのは京都工繊大は優れているな、というのが私の印象だった。

 これがうまく伝わっていなくて相手に近いところに踏み込んでしまうということが稽古のなかでよくある。稽古の場で気がつくとかならず話題にする。結構しばしば指摘しているという印象がある。

 実はこのことを説明するのに植芝守央道主の動画を使わせていただき、開祖植芝盛平先生の動画を使わせていただかなかったのには理由がある。昔稽古されていた技だとこの問題は顕れないのである。


植芝 盛平 - YouTube

  引用した Youtube の翁先生の演武、2:18 辺りで四方投げをみせておられる。受けの籐平光一師範は崩されて植芝盛平翁先生の背後をくるりとまわるように投げられている。四方投げはもともとこのように、相手の腕を取ったら肩の方に攻めて自分の背後を回って自分の前に戻ってくるのを投げるようにコントロールするような理合だった。つまり自分が踏み込んで崩すのではないので、相手の前に入ってしまうような余地はなかった。

 今でも半身半立では肩に返すように崩すし、かつて阿部醒石先生の稽古で四方投げが出た時も、阿部先生は相手の腕を肩の方に崩すやりかたを指導されたのをよく覚えている。これは肩を攻めるやり方だと肘や肩を怪我する者が出る……という話しを聞いた翁先生がその場で技を変えられたのだ、と齋藤守弘師範より、講習会の場で直接伺った。だからどちらの技も間違っていはいない。ただそれぞれの技の理屈をよく理解して我々は稽古を重ねなければならないということだ。その意味で良い指導方法を聞いたとおもった。