隅落し

 7月15日の日曜日の大田区合気道会での稽古だったか、片手取りからの隅落し(すみおとし)を稽古した時のこと。ひとりが取りで、残りのものが順に受けを取っていく形での稽古だった。

 大田区合気道会の稽古に、駒沢大学合気道部の現役生の方々が交代で稽古を手伝いに来て下さる。当日来られていた学生さんが同じ円でやっていて、段位が上の方を投げるのに苦労していたからちらっと「隅落しは腕を押すんじゃなくて、相手の体勢を崩す。崩れたところで肘を落とすんだよ」というようなことをお節介にアドバイスした。

 言っておいてなんなのだが、稽古後に「落とす」って違うかもしれない、いや、違うというか、以前自分は違う言葉で表現していたかもしれない、としばらく考えていた。

 思い出したのだが、以前は「返す」と表現していた。もらって、かえす。

 隅落しというのは子供達に形から教える時は、片手持ちならば

  1. 片手を持たせる
  2. 一歩横に動いて相手の体勢を崩す
  3. 相手の腕を押して後ろに倒す

 というような説明になる。一見簡単な技といえる。

 だが、実際に大の大人がそれで倒れるか。押す時点で相手が体勢を立て直すと押したところで相手を倒せはしない……というようなことによくなる。難しい技だとおもう。

 改めて動画を探してみたのだが、植芝盛平翁先生にせよ、塩田剛三先生にせよ、齋藤守弘先生にせよ、隅落しをやっておられる画像はなかなか出てこない。阿部醒石先生が隅落しをされているところもほぼほぼ記憶にない。それには理由があって、隅落しになる前に呼吸投げになってしまうからだろうとおもっている。それが隅落しという技の本質ではないだろうか。

 以下の齊藤守弘先生の模範演武動画では、7分丁度辺りからの何技かが敢えていえば隅落しに近い呼吸投げといえる。

「崩れたところで肘を落としてやるんだよ」というのはそれを言い表したつもりなのだが、伝わるかどうか。相手の力をもらって体勢を崩し、一番崩れたポイントにそっと、しかし確実にもらった力を返してあげる。