大学アメリカンフットボールの、クラブ運営事例について

 日本大学アメリカンフットボール部が犯した危険行為について知ってから大学アメフト部について調べていたら興味を惹く記事をみつけた。中央大学アメリカンフットボール部のOBによる、クラブ運営を紹介した多羅正崇さんによる記事。自分が在籍していた大阪市立大学合気道部の廃部があったばかりだったこともあり、今となってはもう遅いながらもこんなやり方があるのだ……と参考になることが多かった。

 

news.yahoo.co.jp

 

 前月に日本大学アメリカンフットボール部による危険行為について書いて以降、アメリカンフットボール部にとどまらず日本大学の組織としての異常さを示す報道が多くなっていった。アメリカンフットボールという競技の持つ問題よりも日本大学という私立の学校法人の問題の方がずっと大きいらしいと分かってきた。

 

  ただ、様々な角度からの指摘が出るのを読んでいると、「日大の問題」だけでもないという意見もあって、スポーツのクラブ運営が日本においては全体的に未成熟であることも課題として捉える必要があるという指摘を読んだ時には中央大学ラクーンズのクラブ運営はアメリカンフットボール競技が示した良い事例になり得るのではないかと思い当たった。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 一方で、日本の学生スポーツの場合はどうか。

「アメフト関東学生連盟のトップや審判の報酬は、ほぼゼロです。審判は休日を返上して、ボランティアでやっています。ボランティアでやっている以上、チーム側へ影響力やガバナンスが機能しているとは言えませんし、問題が起きても厳しい対応に臨むことが難しいでしょう」

 関東学生アメリカンフットボール連盟によると、理事や役員に対する報酬はなく、理事会などに参加した際の交通費だけが支給される。日本アメリカンフットボール協会によると、審判への日当も、交通費を含めて1試合数千円程度で、ほとんどが他の仕事しながらボランティアで行なっている。

 

 日本大学選手による危険行為について私は最初、審判が最初のプレーで退場処分まで行っていないことはどうなんだろうと感じた。実際、社会人リーグでプレーされている選手の方で審判の判断にかなり厳しい意見を書かれているのも読んだ。それはそれで正しい指摘なのだが、交通費の支給だけで現場に入っている審判が一発退場を命じるような毅然とした態度を取れないのは、審判の能力以前に大学アメリカンフットボールリーグの運営が審判にきちんとした権限を与えられていないと考える方が根本的な問題に迫っているのではないだろうか。

 

before11.hatenablog.com

 

  日本のスポーツにおける組織経営が未成熟なのは大学のクラブに限ったことではない。先日大学時代の先輩と会食した際に、社会人になってからされていたスポーツをやめて所属していた組織からも退会された話をうかがったのだが、退会を決めた理由は「子供達の参加する大会などを手伝うよう求められるようになってきて、純粋に楽しめなくなったから」ということだった。これが例えば指導者としての役割を担当するひとには一定の報酬があり、一般参加者と分かれているようなシステムが徹底されているならば、「無償で自分の休日を提供して奉仕しなければならないようであるならば続けられない」といったような理由で競技から離れていくひとは減るのではないだろうか。

 

 中央大学ラクーンズは、チームの母体として一般社団法人を設立する方法を採られている。私が知っているいくつかの大学合気道部や道場でも、しっかりしたところは法人といって差し支えないほどに組織化がされている。専任の師範や監督を置いている大学は寡聞にして知らないが中央大学のように本業がありつつ役職をもたせている大学合気道部はある。そこまでできているならば、一般社団法人化やNPO法人化することも出来るかもしれない。

 

 いま思えば私がOB会の規約を作って「組織」にしようとした時、そのような法人化の入り口にはいたのだがそこまでで手一杯で、実際に法人化するようなことまでには全く考えが及んでいなかった。法人化したからといって必ずうまくいくわけでもなく、野球にせよサッカーにせよ2部リーグ以下のチームの経営が大変なことについても取材記事など目にする。それでも小規模な団体ならば個人財産と法人財産の分離、つまり「持ち出し」の抑止や指導者への多少の報酬を実現するツールには成り得る。中央大学に限らず成功例がこれから増えてほしい。