棄権には追徴金を

 4月のこと、内閣府の方から講義のようなかたちで日本の経済政策、つまり人口に膾炙しているところの「アベノミクス」について伺う機会があった。講義といっても意見を述べあうような場である。スピーカーの方が橋下徹大阪市長の行動力を評価していて、アポイントメントが取れたので話をしに行くとお話しされたので、率直に橋下徹さんは評価していない旨述べたうえでそのような施策について話をするならば、と他の地方自治体の首長の名を挙げたのだが、一番最初に私が挙げたのは千葉市熊谷俊人市長だった。スピーカーの方はあまりぴんと来ないようだったが、惜しいことだとおもう。もっとも、スピーカーの方が橋下市長に話に行くのには大阪経済の沈み具合が全国でも突出しているという危機感もあってのことなので選択として間違われている訳ではない。

 その熊谷市長が朝日新聞に寄稿しました、と Twitter にポストされていたのを読んだのでその日の朝日を買って読んだ。今年2013年の参院選に向けての「オピニオン」という紙面で熊谷さんとピーター・バカランさんと宮台真司さんが「投票率」というテーマで寄稿されている。「半分で決める民主主義」というのがテーマ。投票率が低いことについて書かれている。

 熊谷さんは先に千葉市長に再選されたのだが、最初にその選挙の投票率がわずか31%にとどまったことに触れられている。私もそこまで低かったのかと顔を顰めざるを得なかった。その投票率で熊谷さんを市長に迎えられる、というのは千葉市にとってはとても幸運なことではないかと感じた。

 熊谷さん自身は当然もっと多くの人が投票に言って意思表示をしてほしいとおもっているし、そのためにネットも積極的に使っていることを書かれていた。あと、先の小平市の住民投票についても条例にもとづき50%に達しなかったので開票自体をしなかったことについて「(開票するかしないかの)要件を設定するにしても、有権者が選んだ市長や市議会にノーをつきつけるわけだから、直近の市長選が投票率37%なので、それぐらい必要というなら、まだ理屈が通」るのではないか、と書かれていた。

 宮台真司さんはもっと有権者に対して辛辣で「投票率50%の成立要件を批判する向きもあるけど(中略)住民投票は異議申立てではありません。賛成であれ反対であれ、住民自身の意思で決める手続きです。だから賛成派も反対派も参加して高い投票率となることが必要で、成立要件は当然だとおもいます」と書かれている。これは日本の政治文化の問題であり、メディアと教育の影響があるとされている。だからこそ中央の官僚に任せないで方向を決めることができる住民投票が大事なのに……ということになるでしょうか。

 ピーター・バカランさんも「インターネットを使った反原発運動は広がりましたが、最終的にはマスメディアが伝えるかどうかが大きい。能動的にネットで問題を調べる人は実際は少ないですから。コミュニティーリーダーみたいな役割が必要とされる時代だとおもうんです」と書かれている。説き方は違うが宮台さんと同じ主旨を述べられているように私は感じた。

 三者の説かれるところはそれぞれ的を得ていると私は考えているのだが、私の投票に関する意見は少し違う方向を向いている。確かに有権者がきちんと投票の重要性を認識する必要がある。わずかであっても全体の平均値を少し上げるだけで良いのだ。ただ、別の考え方として投票は権利であって義務でもあるということを制度として決めてしまえば良いのではないかという意見を以前から持っている。簡単に書けば棄権に対し追徴金を課せば良い。

 有権者名簿があるということは、住民税あたりに乗せて追徴すれば良いだろうと私などは考える。住民投票を開票するかしないかを条例で定められるのなら、追徴を決める地方自治体があっても良いだろう。こういった選挙に関する立法について公約に加える心ある議員があれば話を聞いてみたい。