椋箚記

主に合気道とまち歩きについて

村岡花子さんが運んで下さった大田区の幸運について

 先月のこと、『ごちそうさん』の次の NHK 朝の連続テレビ小説村岡花子さんを主人公にしたドラマであるというニュースを目にした。もちろん NHK ニュース。

 

上はニュースのブックマーク。リンク先の記事は既に削除され参照できない

 そのニュースは静かに流れていった感があるのだが、いかに『あまちゃん』の余韻が色濃く残り、『ごちそうさん』が頑張っているなかとはいえ、あまりにも大田区民のこのニュースに対するリアクションが薄いように思うのでここで私が多少なりとも騒いでおこうかとおもう。

 L.M.モンゴメリーの『赤毛のアン』はじめ優れた翻訳を多く世に出された村岡花子さんはあとがきなどでは「大森にて」と書かれたということだが、その大森のご自宅というのは現在の大田区中央にあった。ご結婚されて以来居を構えて亡くなられるまで住まわれたということで、大田区は昨年 2012 年の『梅ちゃん先生』から時を置かずに再び朝の連続テレビ小説の舞台に選ばれるという、観光地的幸運を手に入れているのである。

 ドラマの原作は村岡さんの評伝『アンのゆりかご』が主に使わることになるように聞いている。ところが、大田区内の書店をのぞいてみるのだがなかなかこの本を置いていない。今のところ平積みはまだ見たことが無い。

アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

 

  先日「本屋で本を買ってほしい」云々の新聞だかブログだかの記事をちらっと見てほとんど読まなかったのだが、これだけ地域的幸運が舞い降りているのに反応できないというのは商売的に如何なものだろうかと私は密かに大田区の書店に対して苛立たしくおもっている次第である。もちろんまだドラマの放映開始まで間があるのだから遅くはない。各書店、図書館におかれては是非村岡花子さんのコーナーを設けられてほしいと願っている。

 村岡さんのご自宅あとは現在アパートメントになっているがオーナーはお孫さんであると伺っている。そして、建物の一階は「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」となっているそうだが、伺ったことはない。ただ子ども達のかかりつけ医であるえすはこどもクリニックの一区画隣にあるので前を通ることはある。個人運営ということもあり、今年と来年は休館しているような旨記念館のウェブサイトには掲示されている。

 私個人としては記念館を訪れることにはあまり執着はなく、最近村岡さんの遺された随筆などを読んで人柄を感じているところである。穏やかな筆致ながら時に厳しいことを書かれているところもあり、その文章の普遍性に評価を新たにしているところである。

家族の集る部屋としての茶の間も結構、そこに団欒して語り合ったり、読んだり、裁縫をしたりする のは楽しいけれど、集団生活(家族生活)ばかりあって、個人の生活をもつ機会の少なかったわが国の婦人は、いつのまにか、思想内容のまずしいものになって いた。考える生活というものは必要である。批判するにも、討論するにも、議論するにも、まず考えなければならないのに、いきあたりばったり、とっさの思い つきばかり言うことになれてしまった婦人があまりに多い現状である。

『をみななれば』という随筆集に再録されている『書斎の歴史』の中の文章である。文脈としては「女性が自分の部屋を持てなかった過去がある」という話から上記指摘に至るのだが、自分の部屋を持って生活できることが普通になった今でも当てはまってしまう人が一定数居ることについて、我々は足元をみつめなければならない気がする。

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現在の赤毛のアン記念館・村岡花子文庫。実は私は以前から場所を間違って認識していたので、えすはこどもクリニックと同じ旧内川筋にあると気が付いたのは最近のことである