岸本和世さんとの対話
岸本和世さんが東京にしばらく滞在されている、とご連絡を下さったので11月3日の土曜日の午後、お会いしに伺ってきた。
先月10月にメールを頂き、東京に長期で滞在されていて、教会で説教される時があるので聴きにいらっしゃいと誘って頂いていたのだが、ちょうどその日が私が情報処理技術者試験の試験日にあたっていて伺えずいた。そうしたら別の日に滞在先までにと呼んで頂いたのだった。
教えて頂いた都内のお宅に伺うと岸本さんが迎えて下さった。丁度奥様のお誕生日だということでふたりのお嬢様も来られていたのでなんだか闖入したような様子だったのだが、奥様もお嬢様も何となく三十数年前の博多で小学生だった私を憶えていると仰って下さった。私が岸本さんが牧師をされている福岡警固教会に通っていた小学校四年生から五年生の頃岸本さんのお嬢様は高校生だったというから私の方が憶えていない。姓が変わっているとこういう場合に憶えてもらえるという良い例である。
逆に「よくキシモトなんてよくある名前を憶えていましたね」と言われたが、当時私は牧師先生宅の向かいの社宅に住んでいたので毎日のようにその表札を見て過ごしていたからだろうか。
奥様のお話しで初めて知ったことがあった。
私は当時教会の子ども礼拝堂にあった小図書館で毎週のように本を借りていたのだが、亡母が奥様のところに来て「康雄は男の子なのに本ばかり読んでるんですけど大丈夫でしょうか」と話して帰ったことがあったそうである。私には母がそんなことを言ったことは全く無かったが、彼女なりに心配してくれていたらしい。当時母親は私と妹を日曜礼拝に行かせるだけでなく、教会の行事の手伝いなどもすることがあった。
贅沢な時間
奥様のお祝いに同席させて頂いたあと、岸本先生といっときお話しをしていた。それは、かつての牧師と子供礼拝に来ていた小学生というよりは、翻訳作家と読者という様子であったかとおもう。
岸本さんが東京に来られたのは、ご友人の留守を頼まれた……ということで実はこの日伺ったのはその友人の方のお宅だった。専門とされている分野では第一人者という研究者である。この春に退職をされたということで長い旅行に出られた。それくらいの方だから郵便物はいろいろ送られてくる。それを受け取る留守番をしてくれないか……と頼まれたのだということだった。
お話ししたのは書斎でだったのだが、第一人者、というよりはその分野を自分で切り拓いて結果を出した研究者の本棚というのを興味深くみさせて頂くことともなった。読んでいる本を「本棚」のインターフェースで共有しようとするサービスがあるが、他人の本棚なんか見たくはないしなぜそんなインターフェースで共有させようとするのだろうかなどと思っていた。ひとの本棚というのに興味を持ってみたのは大阪市立大学在学時代に恩師である田島裕教授の研究室の本棚以来ではないだろうか。岸本さんも楽しく本を取り出してみておられるようなのだが、自分の原稿もあるようで「宝の山を前にしながら充分に読めない」と笑っておられた。
岸本さんの今までの日本基督教団に所属する牧師としての活動についても話も伺った。その内容はここでは書かないが、あとで調べたら Wikipedia に書かれているような内容も含まれていた。
日本基督教団 - Wikipedia
お話しによると岸本さんはあるコラムの連載を持たれており、そこに今までの自伝的なことを書いていたのだが連載の打ち切りが決まった。そこへキリスト新聞社から「それを本にしないか」と言ってもらったのだということだった。その執筆の文献のひとつとして「これは自分で買ったんだ」と見せて下さったのは『1968』の上下巻。著者の小熊英二さんの執筆態度を岸本さんはとても高く評価されていた。近いうちに岸本和世さんの新著を読めることになるかもしれない。
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