「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメントの提出

 先に「紫陽花革命」について書いたが、その後もデモには参加していない。特に意見が違うとかではなく、単に時間が合わないだけで日が過ぎている。

 これも先に書いたことだが、他にできることがあるだろうかと考えていて、このたびはパブリックコメントを送信した。8月12日が締め切りとなっている分1件で「「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する御意見の募集(パブリックコメント)について」と題されているもの。原子力に関してはもう1件パブリックコメントの募集があったが、より専門的な内容の意見募集でにわかに歯が立たなかった。

パブリックコメント・意見募集案内〔全省庁〕 パブリックコメント・意見募集案内〔全省庁〕


 先のエネルギー行政に関する公聴会に電力会社の社員が一般のスピーカーに混じって意見を表明する時間を与えられていた例を待つまでもなく、こういう場においては組織的な意見提出が行われてきたのではないかとおもう。このパブリックコメントについても同様に東京電力の社員であったり、経団連からの動員であったりで意見提出が沢山為されているような気がする。デモに足を運んでいるみなさんや参加してみようと考えておられる方は、この週末にこんなやり方でも意見表明されてみてはどうだろうか。これもまた紫陽花革命のひとつになるのではないかとおもう。

 提出したコメントは公開される場合があるとのことで、特に意見者が自分で公開することへの制限は見つけられなかったのでいったんここにほぼ同じ内容を掲示する。もし制限についてご存知の方があればご教示願いたい。

 私はいわゆる「ゼロシナリオ」、2030年時点で原子力発電をゼロにするというシナリオを支持する主旨で下記内容を書いた。意見募集要項に「4つの視点」という問題提起があり、それに沿って書いたものである。若干加筆・減筆してある。

1)原子力の安全確保と将来リスクの低減
 リスクに関して言えば、各電力会社及び原子力安全・保安院がリスクに適正に対応するだけの能力を持っていないことが問題であり、「ゼロシナリオ」を選択する理由の大半はこの要素によるものと考えています。


 先に福島第一原子力発電所の事故後の会議映像が公開されていますが、モザイクや音声消去で限定された情報でありながら既に「廃炉を恐れた海水注入の躊躇」「本店側のリーダー不在時間帯の存在」などの問題点が公になっています。


 また、政府事故調査・検証委員会により「SPEEDIの情報を活用して避難を進めれば被曝リスクを軽減できた」という指摘もありました。


 ここに及んで言い訳や改善策などは意味をなさず、根本的に官僚組織に原子力の運用を任せることは出来ない、仕組みとして問題がある、という結論を得たと考えるのが正しいと考えます。このたびの原子力発電所についてのリスク管理が一般企業の業務運用におけるリスク対策に遠く及ばないという認識を共有する必要があります。



2)エネルギー安全保障の強化
 エネルギー安全保障を考えるうえで電力供給が地域ごとの一社独占で運営されているという前提をそのままにしている状態は充分とはいえません。電力が必須であるような施設においては自家発電で数日間運用するバックアップを用意していますがバックアップとしては脆弱で、東京電力の障害時には他社の電力に切り替えるというバックアップを用意し、自家発電は本当の最終手段とするのが望ましい姿であろうと考えます。



3)地球温暖化問題解決への貢献
「エネルギー・環境に関する選択肢」で示されたシナリオごとの火力・再生エネ・原子力の比率グラフはある程度の分析を経たものと評価しています。「ゼロシナリオ」においては2010年実績から1割減、現行エネルギー基本計画にも及ばないものとなる訳ですが、これ以上火力の割合を増やすのは正しくないという考えは理解できました。


 おおきく「再生可能エネルギー」とくくられた技術をこのグラフ以上にいかに伸ばせるかが重要であり、この分野への投資は電力事業への市場参入の規制緩和・自由化の推進を前提に進めるのが正しいと考えます。


 また、一般家庭向けににおいて太陽光、地熱、バイオマスなど小規模でも運用可能な発電スタイルを模索すべきと考えます。これも規制緩和とセットで考えるのが良いとおもいます。
※小規模で運用可能、というのがどのような発電形態になるのかは充分に調べる時間を取れなかった。ご教示頂ければ有難い。


4)コストの抑制、空洞化防止
 繰り返しになりますが電力事業への市場参入の規制緩和、あるいは自由化を考えなくてはコスト抑制はなかなか進まないであろうと考えます。


 産業空洞化についても一社独占運営による電力コストが寧ろ負担になっている可能性もあります。


「原子力発電がないと産業が復興しない」という言説には「高速道路が通らないと地域産業が栄えない」というロジックに通じるものを感じます。後者が真実でないことが各地で確認できている現在、経済団体連合会などによる原子力発電ありきで語られる意見は説得力を失っていることを認識する必要があります。