今更ながら富木先生の演武映像を見せて頂いて

 大阪市立大学体育会OB会連合(OCUSA)から頂いた資料のなかに体育会に所属している団体の一覧が入っていたのだが、その中に競技合気道部があったのを意外に思った。

 Wikipedia の「日本合気道協会」(富木謙治先生がつくられた合気道の団体。乱捕り競技があるため競技合気道、と我々は呼んでいる)の項にはその競技合気道合気道部がある大学に大阪市立大学が入っており(うちは競技合気道部じゃないのになぁ)と不審に思っていたが、ちゃんと別に合気道部があったのだ。

 私は競技合気道についてはほとんど知らずに今まで過ごしてきており、富木先生についてもほとんど存じ上げない。ただ、植芝盛平翁先生の高弟としてイメージで尊敬してきたような有様だったが、急に知りたくなってきた。

 調べてみて自分の勘違いにびっくりしたのだが、日本合気道協会の本部道場である昭道館があるのを東京のどこかだと思っていた。阿倍野(天王寺駅)からひと駅からすぐ近く、あべの筋からちょっと入ったところにあるということを知らなかった。その場所ならば、地下鉄御堂筋線で一本でいける大阪市立大学に競技合気道部があるのは自然といえる。自分が在学した1987年-1991年当時は無かったように記憶しているが、その後出来たのだろうか。

 それはさておき、 Youtube で富木先生の映像をいくつかみて、一番最初に出てきたこれに見入ってしまった。

 始まってすぐの演武は基本動作で、おそらく今も富木先生の門下の道場では繰り返し行われているものなのだろうと思われ、現時点で33万6千という再生回数にそれが現れている。

 私としては開始後6分以降、「直剣の技」というタイトルが出たあとの富木先生の技の厳しさに釘付けになって見ていた。武器技も短刀取り、太刀取り、杖取りも入っていて、今あれだけちゃんと武器ができるひとが合気会にどれだけおられるだろうか。富木先生も柔道から植芝盛平翁先生門下に入られたと聞いているが、さすが初期に直弟子をされた師範は違う。まぁ、塩田剛三先生のように自分は武器は熱心にやっていなくて、と正直に言われている師範もおられるのだが。

 この映像はかなり以前のものと思われるが、もう1本、これはかなり後年と思われる映像がある。

 これをみて、上の演武と技がほぼ変わらないことに感服していた。昭道館は袴は使われないこともあるようで、富木先生もいずれの映像でも袴をはいておられない。下の演武の方がお年を召されている分、技の厳しさは影を潜めているようにも見える。

 袴というのは足捌きを容易に他者に見せないことを目的につけるもので、富木先生はいずれの映像も後進に見せることを意識して撮らせたのではないかという印象を持った。それにあたり、袴は無用だったのだろう。稽古を重ねれば技を「省略して」みせることも出来るのだが、それをされてもおられないのも同様の理由ではないか。自分が立ち上げた合気道を修めるひとたちに見本を見せ続けることを使命に感じておられたのではないか。

 あとの映像の方が、技が緩く見えてしまうのだが、通してみるとそういう気迫が感じられた。

 いつか昭道館に見稽古させて頂いたり、実際に稽古する機会があったりする……かなぁ。