池上トーヨーボールの解体について大田区にききました

 先に池上のトーヨーボールの解体に伴いアスベストの飛散が懸念される、という話しについて書いたのだが、特に情報の開示などないまま解体が進んでいると聞いたので、大田区に問い合わせを入れた。

大田区ホームページ:お問い合わせ

 フォームから入力してメール送信、という問い合わせだったので最初の文章は残っていないのだが、トーヨーボールの解体にあたって大気中のアスベスト濃度の検査を希望する、既に実施されておればよいのだが、情報として伝わってこないので、という内容だった。

 これについて2月3日に返信メールを環境清掃部環境保全課から頂いた。






 平成23年2月2日付で大田区へお問合せをいただきましたトーヨーボールの解体工事に関しての空気環境測定実施のご要望について、お答えします。

 この工事は、法令に則って事前調査を実施し、アスベストの除去工事が行われています。空気環境測定についても、飛散性アスベストの除去工事前後と除去作業中に条例に則って実施しています。さらに、非飛散性アスベスト(成形板等)の除去中も、現場の敷地境界4方向において、アスベストの空気環境測定を実施しています。測定の都度、事業者からは報告を受けており、直近(平成23年1月18日)の測定値でも、アスベスト繊維は検出されておりません。

ご不明な点は、以下の担当まで直接お問合せください。

担当 環境清掃部 環境保全課 環境相談指導係


 これについて私が再度送信したメールが下記。






 掲題の問い合わせについてご回答頂きありがとうございました。
今回ご質問をお送りした椋と申します。

 アスベスト濃度測定の実施状況について、確認いたしました。

 ご回答の下記部分について追加で質問したく、再度メールをお送りします。測定の実施者は誰か、ということです。

>測定の
>都度、事業者からは報告を受けており、直近(平成23年1月18日)の測定値でも、アス
>ベスト繊維は検出されておりません。

 この文面からは、測定を実施しているのは解体を担当する事業者と見えますが、実際事業者が実施している内容を大田区が報告を受けている、ということになるのでしょうか。

 今回のような間違えば公害に発展し得るような事例においては、解体事業者と測定者は別であることでチェックが有効に機能すると思いますので、気になりました。

 測定者が大田区なり、東京都が担当しているということならば良いのですが、お教え頂ければ安心できます。

 返信頂いたのは2月8日。






ご連絡が遅くなりまして申し訳ありません。空気環境測定の測定者について、下記のとおり、お答えさせていただきます。
石綿含有建築物解体工事に係る空気環境測定は、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(略称:環境確保条例)第124条第1項で、施工者が行うことと決められています。しかし、直接施工者が行うのではなく、専門の作業環境測定機関に依頼して行っています。
今回、空気環境測定を行っている作業環境測定機関は、厚生労働大臣指定登録機関である「社団法人 日本作業環境測定協会」に登録している機関になります。また「社団法人 日本作業環境測定協会」に作業環境測定士として登録している者が、環境確保条例施行規則第59条に基づいた測定方法により、採取・分析を行っています。
なお、測定した結果については、現場事務所脇の掲示板に、貼り出しております。
              
環境保全環境相談指導係


 この回答を読む限り、第三者による検査が行われていているように見える。ただ、アスベスト飛散の有無を確かに証明するに足る仕組みになっているのか……ということがまだよく分からないでいる。

 問題がおきていないならば、広く地域住民に知らされてしかるべきだと思う。先に書いたようにアスベスト飛散、という事態になると2km四方に影響が有り得るのだから、杓子定規に現場に掲示しておけばよいというものではない。

加筆(2011年2月13日)

 上記「アスベスト飛散の有無を証明するに足る仕組みか」という問いについて、今回の事例をもって考えられることを書き足しておく。東京都や大田区に対して懐疑的な書き方になるのはご容赦頂く。

 今回のトーヨーボールのビル解体に際して問題になったのは「解体業者がアスベスト使用無しと判断した場所に、アスベスト使用が疑われている」という点になる。この疑いについては現在に至るまで、解体業者も、大田区も、説明しないで解体作業を進めている。

 肝心なアスベストの利用有無判定が解体業者と同一で良く、第三者による判定よりも精度に甘さが生じうるリスクがあるのが放置されているのが問題であり、そこに問題がある以上一見きちんと大気環境測定が行われているように見えても「実はアスベストが使用されているのに見過ごしている(あるいは意識的に見過ごしている)場所の解体作業時」の測定は行われずに解体が進められるということになる。

 なぜそのような抜け道が用意されているのか、というと、検査に時間とコストがかかりすぎるのを嫌っているのではないかと私は推測している。他に真相をご存知だ、という方が居られたらご指摘頂きたい。

 あまりコストがかかっては事業を落札するにあたって建築業者は不利になるし、東京都としてもある程度きちんとやっているように見える仕組みになっていれば良い、という程度の手の抜き方なのではないだろうか。

 前の都知事選の後だったか、石原慎太郎氏が築地市場の移転を強行しようとして非難されていた点について「築地の建物はアスベストがあったりしてあれはあれで問題があるんだ」というような釈明をしていた映像を見た記憶がある。石原氏については大きなプロジェクトが好きでいらっしゃるという印象を持っていて、かつそのプロジェクトを立ち上げてそれなりの精度で成功させて成果であると示せれば良いと考えておられるように見えている。アスベスト対策への適度な抜け道が用意されているというのはその実例がひとつ増えたということ。

 折りしも都知事の改選が近づいてきたが、名前を知っているくらいで都民の利害を第一に考えない可能性があるような候補は選びたくないものだという思いを新たにする。石原氏に限らず。

 なお、本日トーヨーボール横のコジマに行ったので現場を見てきたが、現場事務所脇の掲示板に掲示されているという測定結果は見つけられなかった。現場事務所というのがコジマの背後にある土地で、そこを見落としたと気がついたのは現場を離れる時だったので再確認できなかった。