優先順位の話

 これは本来その場で言うべきことなのだけれど、遠慮があって言えなかった。そういう自分への反省もあって書かずにおこうかという考えも浮かんだのだが、ちょうど大阪市大合気道部の後輩へ向けて書くいい機会だともおもったのでちゃっかり書かせて頂く。

「その場での優先順位を考えて行動する」という、私が道場で学んだことについて。別に道場に限ったことでなく身につけろ、ということだが、私はたまたま道場で学んだ、という話で。

 今日の大田区合気道の稽古は会長である尾崎師範が稽古をつけて下さった。私は自分の子供が稽古しているので、子供の稽古も出ている。最近は下の子も稽古し始めた。

 稽古の最後に尾崎先生が子供たちに話しをされる。いつも話されることは、お父さんお母さんの言うことを聞きなさい、兄弟仲良くしなさい、というような基本的なこと。

 今日尾崎先生が話しされている時、次に中学生以上の稽古から参加される方々が待っていて、そのうち何名かが大きな声で話しをされていた。私が注意すべきだった、というのは、先生が話しされているのに邪魔するようにしゃべっていたものがいた、ということ。

 例えば植芝盛平翁先生が稽古されていて、まだ自分の稽古で無いからと道場の外で大きな声で話していたらどうなるだろうか。間違いなく高弟の方々から強烈につるし上げられるであろうと想像する。また吹田の天之武産合気道道場で阿部醒石先生が話しをされている時に誰かが更衣室などで聞こえる声でぺちゃくちゃ喋っているひとがいたとしたらそれが先輩であれ後輩であれ飛んでいって諌めるだろう。

 大田区合気道会においてはそうなっていないというのは、尾崎先生がとても気さくに道場生に接しておられるので、教えて頂いている方が油断しているのだと思う。でも、それでは良くない。

 大田区合気道会においては会長の尾崎先生がもっとも優先される(あるいは尊重される)べきであることは異論はないはず。尾崎先生は多忙であり、いつも稽古をつけて下さるとは限らないのだから、稽古されている場合は全員が注視しているのが当然の姿だろうとおもう。

 特に先生が子供に話している時だった。子供たちは本当によく見ている。大人のひとが後ろでぺちゃくちゃしゃべっているのに、なぜ自分らだけおとなしく話を聞いておらねばならないのか、と直感的におもっているはずだ。一度感じた印象を払拭してあげるのには労力がいるし、そもそもそんな印象を持って稽古に来るのでは子供たちの為にもならない。道場に来ている以上、どのひとも道場全体のことをおもって立ち居振る舞いを取らなければならない。

 私が天之武産合気道道場で学んだのは──要はお叱りを受けたことがあったのだが──その場で誰を優先すべきか、また優先順位はどうかを常に場面に応じて判断するということ。阿部先生がおられる時は、お客様が来られている時は、師範代の先生が教えられている時は……というように。

 ということで、今回その場で注意できなかったことを反省しまして、次回そのようなことがあったら即行動に移すことといたします。道場に限らず、ね。道場では二度とそのような場面を見ないことが一番いいけれども。