マダムシンコの店員の対応に学ぶこと

 ちょっと経ってしまったがテレビでその商品と代表の方が取り上げられるのを見た「マダムシンコ」という、バームクーヘンなどを扱うお店。大丸梅田店の地下1階に寄る時間が先日あったので、おみやげに買っていった。家内は複数回、テレビで取り上げられているのを見ているそうで、一度食べてみたい、と言っていたのだ。番組での評価に違わずおいしいバームクーヘンだった。

 番組名などはきれいに忘れたが、テレビの密着取材ものというと台本がありそうなので斜にみていた。箕面に有るという本店に代表(つまりシンコさん)が現地視察に来ると、厳しいチェックが入る。紅茶を飲むお客様のための砂時計が代表が選んだものでなくなっているとチェック、見せの前の隅の掃除が行き届いていないとチェック、とか。

 経営者が全てを決定していて……というワンマンな経営者というと昔、やはりテレビでワタミともう一社別の居酒屋の経営者を取り上げていたのを思い出す。ワンマンとして取り上げられていたのはワタミの渡邉さんではなく、もう一社の方だったがこれがマルシェだったかモンテローザだったか全然別のところだったかさっぱり忘れている。とにかく内装からメニューから自分で決めないと気が済まず、その下に徹底的に罵られる部下の人がひとりいて……という内容だった。ワタミが全てを従業員に決めさせていくスタイルと対比させていて、今から思えば台本があったのかしらとおもう。

 そういうのを見ての印象は、人を育てる、という観点ではワンマン経営者のもとでは難しいんじゃないだろうか、というもの。待っていれば指示が出るわけだし。ワンマン経営者がいなくなってしまった時、果たして企業組織として存続し得るのだろうか、と考えてしまう。ひつこいが台本に導かれてそう思っているのかもしれない、と思いながらもだ。

で、当日のこと

 さて大丸梅田店地下の「マダムシンコ」でマダムブリュレ、という、バームクーヘンにキャラメルをかけてバーナーであぶってから冷やしてある、という斬新なお菓子を買って帰った時、相手をして下さった男性の店員さんのこと。

 持ち運びがどれくらいかかるか聞かれたので、東京に持って帰るまで時間がかかる、ということを伝えた。すると店員さんは「4時間を越える持ち運びだと上のキャラメルが溶けて生地に染み込んで風味が変ってしまいます」と言われる。

 説明を聞いたうえで、それでもいいから買っていく、と伝えると「本当のお味で召し上がって頂きたいのですが」と私に言ったうえで「出来る限り持つように、多めに保冷剤を入れてみます。もしかしたら持つかもしれません」と作業をしてくれた。別料金の保冷バックお買い上げは大前提で。

 実際かなり多めの保冷剤を重ねて重ねて投入してもらい、お買い上げして帰った。帰宅して即冷蔵庫に入れ、翌朝家族に食べてもらったがまだそんなにキャラメルは溶けていなかったようで美味しく食べられたようだった。ただ、更に翌日になるともうキャラメルが生地に染みてきて、確かに風味が落ちたかも、と家内が教えてくれた。

で、何を学んだのかというと

 この店員さんの対応は生ものを扱うお店の店頭販売としては基本的なものなのだろうが、接客に限らず電話でのユーザーサポートなんかでも同じことをしているし、マニュアルに落とせるものなのだろうと思う。つまり、

1.ご要件を伺う
  ↓
2.ご要件に問題がある場合はまずお客様に説明する
  ↓
3.問題をお客様にご理解頂けたと確認できてから、対応に入る/問題の影響が大きいならば対応をとめる方向で調整する
  ↓
4.対応すると決めたら、問題を回避するために全力を尽くす

 という手順。

 でも実際は1.でご要件を伺って正しく読み込んで、2.問題の有無を判断する、となると要件が無数に変化し得るような場合、そのパターンごとに問題の有無を判断するのが難しいようなこともある。ケーキ店ならば持ち運びの時間を確認し、時間に応じた保冷を施す、時間が長すぎる場合は販売できないことを伝える、とシンプルだとは思うのだが。

 もちろんマニュアルはあるのだとおもっているのだが、店員さんの口ぶりとか振る舞いから「うちんとこの商品をできるだけ美味しく召し上がって頂きたい」というのが伝わったので、マニュアルのためのマニュアルではなく、経営者から店頭の現場のひとまで目的を共有したうえでのマニュアルになっていそうだと感じた。

 私の感想が正しいのであれば、テレビから伝わった「ワンマン経営者が生んだヒット商品」ということでなくて、人も育っているのではないかな、と想像したり。

 想像があたっていて、店がながく人に愛されて続けばよいとおもう。