紹介状の要否について
先に『合気道マガジン』について調べていたが、以前は何冊か持っていたはずなのでこのたび蔵書を全て本棚に出したのを機に調べた。全て処分してしまったようで残っておらず、現物で出版社名など確認できていなかった。
やむなく検索していたらこんな記事を見つけた。群馬にある合気道道場主の書かれた文章で、この道場は「養神館系」と表現されているのだが養神館に所属されているのか、養神館からも独立してやっておられるのかよく分からない。
合気道小話「合気神社」(【錬身会合気道】 群馬杉武館ホームページ内)
この中で道場主である杉本久氏がふと気が向いて茨城県岩間にある合気神社にお参りし、斉藤守弘先生の道場に見学に行こうとする話が書かれている。斉藤先生に紹介状の有無を尋ねられ(えーっ、そんなもの要るの?)、と思ったと書かれている。今道場をやっているくらいの人物でもこの程度の認識なのだな、と変に感心した。
岩間道場に伺うなら事前に調整するか、紹介状を持参するのが常識。見学だけでもそうか、と思ったが本来武道の道場というものはそういうスタンスが正しいのではないだろうか。植芝盛平翁先生は「わざわざ集めてまで教えんでもよろしい」と言われていたと聞いた記憶がある。頭を下げにきた人に、その人となりを見て教える方が判断するので良いのだ、ということだ。
ちなみに以前、阿部醒石先生門下の大学合気道部のある部員が何の事前調整もなく岩間道場を訪れてしまい、えらく叱られることとなったことを覚えている。大阪府立大学合気道部が毎年合宿をお願いしているのでそれに帯同すれば良かったのに、と言われたものだ。ちなみに私も誘って頂いたがアルバイトを優先して参加しなかった。今思えば斉藤守弘先生ご健在のだったのであり、参加しておけばよかった。
なお杉本氏の場合見学だけでもそのような対応をされたのは、杉本氏が自ら書かれているように、ジーンズとジャンパーというラフな格好だったということもあるかもしれない。『武産合気』で著者の高橋英雄氏(白光真宏会の前副理事長)がラフな格好で翁先生のところに伺ったら「訪問時にはネクタイを締めて来るのが最低限の礼儀だ」と諭されて赤面することとなった、という話を思い出した。
- 作者: 高橋英雄,植芝盛平
- 出版社/メーカー: 白光真宏会出版局
- 発売日: 1986/11
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近所でポスターを稽古場所や時間を掲示している道場でそこまで格式ばらなくても良いと私は考えているが、場合によってはそれくらいの緊張感を持たねばならないということは認識しておいてよい。
もうひとつ興味をひいたのが、杉本氏が『合気道マガジン』を出版していたレイ出版社の土屋雅昭氏を知っており、紹介を頼むくだり。この時土屋氏が「いま斉藤先生とあることでもめていて、紹介はできない」といわれたというのである。
別に書いたが、『合気道マガジン』はある時期に『氣マガジン』と誌名を変え、内容も合気道から離れていった。上記文章について日付が明記されていないので『氣マガジン』に変わる前としか分からないのだが、もめていたという内容が西野流呼吸法に偏った内容についてだったのか、合気会には今に至るまで斉藤先生をよく思わないひとがいるのでそれを反映した内容を誌面に載せたというようなことだったのか、と想像が働いた。
ちなみに現在の『カルナ』誌のサイトに土屋氏の筆による、氣の研究会から『氣マガジン』の
商標登録取り下げの訴えがあったことの顛末を報じた記事がある(→PDFです)。
この件については氣の研究会の訴えは取り下げられたとのことで、その通りに解釈してよいのではないかという印象を持っているが、もしかしたら土屋氏も自分の考えをそんなに素直には曲げない性格のひとで、周りとの摩擦を厭わない方なのかもしれない。斉藤先生とのことも、そのひとつの発露であったろうか。