ピカレスク

 中学生の時だったか、高校生の時だったか(あるいは小学生だったか)母親が「古本市があったから」と新書サイズの小説を買ってきてくれたことがあった。

 私がアガサ・クリスティだの推理小説をよく買っていたのでそれらしいものを選んできたらしいのだが、これが私立探偵事務所を舞台にしたセックスありのもので、どうも間違って選んでしまったようだった。私といえば助平野郎としてありがたく蔵書に加えて、活用させて頂いた。

 さてその小説のタイトルは忘れてしまったが、なんとなく作者は大藪春彦さんではなかったか、と覚えていた。その後私は大藪春彦さんの作品をほぼ全く読んでいないので、その記憶が正しいのか全く自信がない。『野獣死すべし』とか『蘇る金狼』の印象と、自分が読んだ若干抜けたところのある探偵の物語はちょっとギャップがあるようにもおもえる。ただ作品によっては『探偵事務所23』などコメディの要素があるものもあるようなので、読み直してみようかともおもう。

 私はハード・ボイルドだとか、悪漢小説だとか、バイオレンスの香りのする小説を今まであまり読んでいない。あえてそういうものをあげてみると、レイモンド・チャンドラーのハヤカワ文庫の訳本や、そのチャンドラーの香りが強い原りょうの『私の殺した少女』などの沢崎のシリーズ。

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)


 ロス・マクドナルドの『さむけ』、これもハヤカワ文庫。

 翻訳物だと、ハードボイルドに分類されないのかもしれないが『二日酔いのバラード』にはじまるウォーレン・マーフィーのトーレスとチコの探偵シリーズ。

二日酔いのバラード (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 111‐1))

二日酔いのバラード (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 111‐1))


 日本語でつづられたものだと藤原伊織『テロリストのパラソル』。実は『Cの福音』しか読んでいないけど楡周平。そんなところくらいまでで、最近はこういう雰囲気のものを読んでいない。

テロリストのパラソル

テロリストのパラソル

Cの福音 (角川文庫)

Cの福音 (角川文庫)


 そんな興味外のところに久しぶりに目が向いたのは、東山彰良氏の大藪春彦賞受賞作『路傍』を読了したから。

 新聞など滅多に読まないのだが、臼田坂下にある「カヤノ」での散髪の順番待ちで朝日新聞だったかを読んでいたら受賞の記事を見つけた。

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 東山氏は「マチともの語り」で『love Bytes』を書かれているので、お名前を知っていたがお会いしたことはない。受賞を機に『路傍』を読んでいたのだが、後半から段々面白くなってきてしまった。「そんなバカな」感とともに段々スペードアップしていくストーリーと、ラストのやるせなさ。

路傍

路傍