バレンボイムの音楽と行動

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートを実家のテレビで見た。私は見ることができれば例年テレビで見るが、中学・高校・大学と吹奏楽をやっていてユーフォニアムやホルンを吹いている妹にきくと「綺麗過ぎてあまり好きじゃない」という。妹はたとえばヨハン・シュトラウスに限らず「モーツァルトもあまり好きじゃない」。「もっと力強いのがいい。ベートーベンはいい」ということなのだそうで、ニューイヤーコンサートを楽しむのは私のような普段はそれほどクラッシック音楽を楽しまないような人にこそ広く向いている娯楽なのかもしれない。

 ということで最初の数曲をきいたところで他のチャンネルにかえてしまい、次に聞いたのは残り2曲、『美しく青きドナウ』と『ラデッキー行進曲』のところだった。数曲しか聴いていないわけだが、今年はいいなぁ、と思いながら聴いていた。私は小澤征爾さん指揮の時テレビで少し見て、後日DVDを購入してから見るようになった新参ものだが、今年はイマイチだなぁ、とか偉そうに思ったりするのである。今年は良かった。

 指揮者はダニエル・バレンボイム。番組の字幕で「中東問題に積極的に取り組み……」と紹介されていたので、このタイミングでそのような人物が指揮者に選ばれるというのは、何かしらメッセージがあるのかと思ったのだが、調べてみるとニューイヤーコンサートの指揮者というのはコンサート終了直後に次の年の指揮者が発表されるというスケジュールなのだそうだ。それにバレンボイム氏が優れた指揮者であるということは疑いもない事実で選ばれることに何の不思議もないようだ。下種の勘繰りか。






現在は世界でも最も有名な辣腕指揮者のひとりとして定評がある。カラヤンバーンスタインから近年のヴァントやジュリーニベルティーニに至るまで、第二次大戦後に活躍してきた指揮界の巨星が相次いで他界した後の、次世代のカリスマ系指揮者の一人として世界的に注目と期待が集まっている。

ダニエル・バレンボイム - Wikipedia

 バレンボイム氏はアルゼンチン生まれのユダヤ人なのだそうで、現在はイスラエル国籍だという。イスラエル国籍ながら中東問題については現在空爆が行われているガザ地区の占領を非難し、アラブ人によるパレスチナ国家の樹立及びイスラエルとパレスチナの和平
を望む発言をされているのだという。またウェスト=イースタン・ディバン管弦楽団という、パレスチナ・イスラエル両国の若い音楽家からなる管弦楽団の設立に関わり指揮者をしているが、パレスチナ側の音楽家が「ダニエル・バレンボイムならば」と認めたというところが大きかったらしい。イスラエルの元首すらバレンボイムに非難を浴びせることがあるというから、実は緩衝材的な役割を担っているというような裏がない限り、本当にユダヤ人の良心の体現者であるらしい(下種の勘繰りひつこいなぁ)。

 ちなみに1990年、1995年、1998年、直近では前々回2007年とニューイヤーコンサートの指揮者に選ばれているスービン・メータ氏はインドの方だがイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の終身音楽監督に就任しており、熱烈な親ユダヤ・親イスラエル主義者であるらしい。

ズービン・メータ - Wikipedia

 彼自身がガザの占領や空爆についてなんらかの声を上げたという話はないようだが、イスラエルの広告塔の役割を果たしているとの批判はあるようだ。メータ氏が優れた指揮者であることにも疑いはないが、彼が昨年の高松宮殿下記念世界文化賞を受賞していることについてもまさかU.S.A.からなんらかの圧力でもって選考が行われているんじゃなかろうな、とちょっと心配になる。高松宮殿下記念世界文化賞の設立元、日本美術協会の前進龍池会の発足にはフェノロサが関わっていたようだがはて……とか。(下種の勘繰りここに極まれり)。

 バレンボイムの指揮による音楽が紛れもなく美しかったことを最後に、勘繰りをやめる。

ニューイヤー・コンサート 2009 [DVD]

ニューイヤー・コンサート 2009 [DVD]